女性向け11文章ブログ。無印初期メン多め。
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膝の裏側に歯形を見つけた。土曜日と、木曜日。そんなとこ噛むなんて変態だと思って近くにいた少林寺を手招きしてあれ聞いてきて、と言った。少林寺は腑に落ちない顔で嫌そうにしながら、それでもつかつかと迷いない足取りで彼に向かう。少林寺はそういうおかしなことを想像したりしないんだなぁとしみじみしたら、今度はまっすぐこちらに向かってきた少林寺にみぞおちを突かれた。ぼへっ!?自分で聞きに来いって。少林寺は淡々と言う。今はむりと熱がこみあげる腹を押さえて首を振ると、少林寺はさげすむような目をした。それがたまらなくいい。彼は少林寺の向こうでニヤニヤしながら待っている。噛みちぎられてぎざぎざの爪とあかく剥けた指先をして。ジェラってる?結局むこうから近づいてきてそんなことを言う。うそうそ。おれおまえひとすじ。それが嘘だろと思ったけれどなにも言わずにみぞおちを叩いてやった。宍戸のからだは骨だらけで手がいたい。
ときどきいろんなものに対して無償にやさしくしたい期間がやってくる。熱が出そうなときのあの感じに近い。鼻の奥があつくなって倦怠がどろっとのどをすべり落ちる、瞬間。なんだかもう世界のすべてがいとおしくてうつくしくて、あまがゆいもどかしさに脳をわらわら侵されながら嘔吐する。病んでるなぁっては、思わなくもない。宍戸は吐きぐせがあってよくひとりで吐いている。つらいときとか苦しいとき、さみしがりの宍戸はことさらひとりでいようとする。からだをからっぽにして、つらいことや苦しいことがそこをじゃんじゃん抜けていってくれるのを待っている。あのひとといるときどうなのかなぁと思って、思っただけで考えるのをやめた。まるで宍戸が必要みたい。そんなことはない。ぜーんぜん、だ。だけど吐きながら考えるのは宍戸のことばっかりでかなしくなる。おれたちはくず野郎だ。いっそ世界から見捨てられたい。でもそれはひとりでいい。宍戸はくず野郎なりに上手にやっていけると思う。
なんだか自分が自分でなくなっていくような気がしている。と宍戸に言うと、宍戸はちょっと動揺して、嬉しいのとかなしいの半々みたいな感じで、大丈夫だよ、と言った、そのあと。こういうのうつるもんなの。ひとりごとみたいに宍戸は呟いて、なんだかそれがいやに引っかかる。うつる。宍戸からなにかをうつされたのだろうかと考えて、すこし記憶を探っただけでも心当たりがたくさんありすぎてウゲーとなった。病気とかなら困る。困るけどそれ以外のどうでもいいものなら別にいいかなと思う。そのうち。宍戸はつめたい手で首や耳や頬にさわる。宍戸の指先は荒れていてつらい。みえたり、聞こえたり、みえなくなったり、きこえなくなったり、するかも。なにそれ。うーんおれもよくわからんけどおれがそうだったから。宍戸は照れくさそうにわらって大丈夫だよ、と言った。案外わるくねーよ。くずみたいなおれたちにはお似合いだという意味だろうか。
今思えば宍戸は大丈夫だと、そればかりを口にしていた。誰に言うでもなく、かと言って自分に言い聞かせるわけでもなく。今思えば。思い出せるものは少なくなった。みえるものが増えて、みえなくなるものも増えた。あまがゆいあの感覚が脳をかき混ぜることもなくなった。もう世界をいとおしくてうつくしいものだとは思わない。それでもときどき得体の知れない羨望がこみ上げて、だらだらと吐いていたりもする。並んで帰りながら、宍戸がこれを、あのひとにはうつしてないといいな、と思った。大丈夫、なのは、いつも外側ばかりだ。守られない約束と、咲き誇る悔恨。うつくしい世界に吹きだまりささくれる塊。大丈夫だよ。宍戸はのどをそらす。しろいひふ。あかい指先。あおい血管。あかい嘘。あかいあかい嘘。明日なんて来ないよ。冬の嘘はきれぎれになって、ちぎれ果てて、つかれ果てて、粉々で。そのあとには星がひかった。明日になれば消えてしまうので、それまであればいいと思った。
きみは荒れた唇でおれのからだを這い回り、骨だけの魚がきみの背中を這い回る。南風は止んで、北風が暴れる。きみの街に冬はまだかな。きみの街には冬がまだ来なければいいな。
ぼくはねーきみを騙したいんだよ。なんて言ったらきみは泣くかな。
チームマイナスひゃくパーセント
宍戸と栗松。
ときどきいろんなものに対して無償にやさしくしたい期間がやってくる。熱が出そうなときのあの感じに近い。鼻の奥があつくなって倦怠がどろっとのどをすべり落ちる、瞬間。なんだかもう世界のすべてがいとおしくてうつくしくて、あまがゆいもどかしさに脳をわらわら侵されながら嘔吐する。病んでるなぁっては、思わなくもない。宍戸は吐きぐせがあってよくひとりで吐いている。つらいときとか苦しいとき、さみしがりの宍戸はことさらひとりでいようとする。からだをからっぽにして、つらいことや苦しいことがそこをじゃんじゃん抜けていってくれるのを待っている。あのひとといるときどうなのかなぁと思って、思っただけで考えるのをやめた。まるで宍戸が必要みたい。そんなことはない。ぜーんぜん、だ。だけど吐きながら考えるのは宍戸のことばっかりでかなしくなる。おれたちはくず野郎だ。いっそ世界から見捨てられたい。でもそれはひとりでいい。宍戸はくず野郎なりに上手にやっていけると思う。
なんだか自分が自分でなくなっていくような気がしている。と宍戸に言うと、宍戸はちょっと動揺して、嬉しいのとかなしいの半々みたいな感じで、大丈夫だよ、と言った、そのあと。こういうのうつるもんなの。ひとりごとみたいに宍戸は呟いて、なんだかそれがいやに引っかかる。うつる。宍戸からなにかをうつされたのだろうかと考えて、すこし記憶を探っただけでも心当たりがたくさんありすぎてウゲーとなった。病気とかなら困る。困るけどそれ以外のどうでもいいものなら別にいいかなと思う。そのうち。宍戸はつめたい手で首や耳や頬にさわる。宍戸の指先は荒れていてつらい。みえたり、聞こえたり、みえなくなったり、きこえなくなったり、するかも。なにそれ。うーんおれもよくわからんけどおれがそうだったから。宍戸は照れくさそうにわらって大丈夫だよ、と言った。案外わるくねーよ。くずみたいなおれたちにはお似合いだという意味だろうか。
今思えば宍戸は大丈夫だと、そればかりを口にしていた。誰に言うでもなく、かと言って自分に言い聞かせるわけでもなく。今思えば。思い出せるものは少なくなった。みえるものが増えて、みえなくなるものも増えた。あまがゆいあの感覚が脳をかき混ぜることもなくなった。もう世界をいとおしくてうつくしいものだとは思わない。それでもときどき得体の知れない羨望がこみ上げて、だらだらと吐いていたりもする。並んで帰りながら、宍戸がこれを、あのひとにはうつしてないといいな、と思った。大丈夫、なのは、いつも外側ばかりだ。守られない約束と、咲き誇る悔恨。うつくしい世界に吹きだまりささくれる塊。大丈夫だよ。宍戸はのどをそらす。しろいひふ。あかい指先。あおい血管。あかい嘘。あかいあかい嘘。明日なんて来ないよ。冬の嘘はきれぎれになって、ちぎれ果てて、つかれ果てて、粉々で。そのあとには星がひかった。明日になれば消えてしまうので、それまであればいいと思った。
きみは荒れた唇でおれのからだを這い回り、骨だけの魚がきみの背中を這い回る。南風は止んで、北風が暴れる。きみの街に冬はまだかな。きみの街には冬がまだ来なければいいな。
ぼくはねーきみを騙したいんだよ。なんて言ったらきみは泣くかな。
チームマイナスひゃくパーセント
宍戸と栗松。
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