ヒヨル 深海夜想曲 忍者ブログ
女性向け11文章ブログ。無印初期メン多め。 はじめての方は「はじめまして」に目を通してください。
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目金のほほはサッカー部の誰よりもしろい。連絡網とデータベースをつくりたいからと入部早々、メモを持ってはしりまわった音無が最後にたどり着いたのが目金だった。住所氏名年齢連絡先血液型生年月日家族構成。矢継ぎ早に質問をくりだす音無を冷ややかにながめて、で、それ必要なんですか、とひとことだけ言った。必要なら答えますけどね。言葉につまってへらっとわらった音無に、そのしろいほほはわらいかけることもしない。住所氏名年齢連絡先血液型生年月日家族構成、を、つらつらと音無にまけない早口で並べて、用がないならもう帰ってくださいねと、目金は文庫本をひらく。フレームのないレンズのふちにほそく光がたまっていて、その奥でながいまつ毛がまたたいた。
先輩は本すきなんですか。その質問を音無が言い切る前に、ぼくに関わると嫌われますよと目金がその言葉をぶち切る。さわさわと波のように押し寄せるひそやかな話し声やわらい声に、音無はようやく気づくのだった。早く戻ってくださいわからないひとですねと目金がすこしいらだったように言った。メモを持って失礼しましたと教室を出ると、爆発するようなわらい声がした。あああのひとがわらわれているのかと音無は肩ごしに振り向いた。背中があつくなったりつめたくなったりした。目金欠流、という文字を、指でゆっくりとなでる。それでなにが消えるわけでもない、けれど。
(あのひとは嫌われているのか)
それ以来、目金のつるりとしたしろいほほが音無から消えない。角がよれた文庫本をめくるほそい指が消えない。光のたまったレンズの奥のまつ毛のながい目が消えない。いつまでもあのひとを追えども、消えることがない。音無の思考は海のようだった。波のように押し寄せるものはわらい声でもなんでもなかった。ふかいふかい海だった。そのいちばん底にあのひとを落とした。







深海夜想曲
目金と春奈。
最初からイバラの道だったのです。
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無印雷門4番と一年生がすき。マイナー愛。

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