ヒヨル 雑記 忍者ブログ
女性向け11文章ブログ。無印初期メン多め。 はじめての方は「はじめまして」に目を通してください。
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本日で当ブログが三周年を迎えることができました。
これもひとえに皆様のおかげでございます。
いつもご訪問ありがとうございます。

三周年ということで、皆様のお声を少しお伺いしたいと思い、アンケートを作成いたしました。
無記名で行えますので、お時間ございましたらちょこっとお願いいたします。

http://enq-maker.com/2QzNBnM

左のリンクにも置いてあります。

久しぶりに拍手も変更しました。
「とぶこどもたち」
彼らがとべたら、というテーマの短編が8本入っています。
最後の彼は飛べません。笑
過去の拍手は下に。

相変わらず一年生が好きすぎる一年間でした。
世間的にはすっかりGOの雰囲気ですが、今後も初期の彼らのよさを忘れず、もそもそ活動していきたいと思います。もちろんGOも応援しております!
皆様にとりましても、楽しいイナズマライフが送れる一年でありますように。
今後ともよろしくお願いいたします。

2012/2/4  ヒヨル/まづ

ナイティ・ナイト・アリス


【空洞です】
空をもったりとした質感の降雨量調節ロボット、通称くらげが三体も泳いでいる。
そのだらしないからだの中にたふたふに張った水が下からでもよく見えた。
まるい光の輪のような模様を頼りなく地面に投げかける、くらげの影がすうっと栗松を通りすぎる。
なんで三体もいるんだと思ったが、昨日の雨はすごかったらしいと端末のニウスが告げた。寝ていたので知らない。
学校に着くとスクリーンボードががざがざに砂嵐を映していた。多すぎるくらげがジャミングしているらしい。
うんざりした顔のクラスメイトたちは、端末をリーダーに触れさせて次々に下校をはじめてしまった。
タイミングを逃した。教室を覗く。床に宍戸が寝っ転がって、ジャンク屋で拾ってきた旧形態のゲームをしている。
おはよ。うん。なに。アルピージー、昔の。へー。やべー電波いっぱい出てる感じする。ひひっと宍戸はわらう。
なんかおもろいことないかねぇと宍戸が言うので隣に転がって画面を覗き込んだ。ちゃちいドット絵。
端末をいじったらメールが来ていた。再登校、再登校。せーかーい、と宍戸が言った。
ぱぱらぱっぱっぱー。レベルアップ。人生は上々。

【地獄巡り】
Cと呼ばれる地区には旧世紀の遺物が生活としてそのまま残されている。
いつ来ても博物館ものだなぁとひとりごとみたいに言ったら、まーそーかもねーと少林寺はこともなげに言った。
なんのにおい。油。油?あー、液体のね。直接鍋に油引いて肉とか焼くの。ここでは。
食い道楽だが、少林寺のその言葉に思わず胸元を押さえてしまった。油を直接引く?きたなくない?
調理用だよ。ちいさな背中があからさまにむっとしたので壁山はあわてて謝った。ごめん。きたなくない。
戸籍?あるよ。少林寺は以前そう言っていた。端末もあるし、健康診断も受けてる。学校も。
親まではわかるけどその上はわかんね。とも。たぶん少林寺は流民の子孫だ。今でもC、旧チュウカ街に住んでいる。
純潔日本人の壁山とはまるきり生活様式が違う。路地に充満した油のにおい。そんなもののにおいははじめて嗅いだ。
薄暗い通りをうねうねと折れた、廃ビルみたいなのの前で少林寺は立ち止まる。ここでいいよ。
壁山はなんとなく足を踏み変え、今度学校来る?と聞いた。少林寺はぽかんと口を開け、行くけど、と言う。
本当はC地区の人間とはあまり接触してはいけない。それが暗黙の了解だった。差別はいけないと謳いながら。
またね、と手を振ると、少林寺は仏頂面で手を振った。今日も少林寺の椅子はどこかに隠されていた。

【ストレンジジャーニー】
かれこれ三日は眠っていない。目金はしょぼつく目をこすりながら軽く手を振った。新しいウインドウが開く。
部屋の壁全面にディジタルスクリーンをぶちこみ、そこを泳ぐように生きる目金に時間の感覚は希薄だ。
立体マウス(友人の友人の都築から譲り受けた)でばしばしページを送り、ウインドウを立ち上げては閉じる。
物理的接触なんてしない、と心に決めた二年前から、目金は複合情報統合基地ディラックから一歩も出ていない。
外界では週に三日も、いまだに物理接触を『させている』らしい。ばかばかしい。目金は潔癖症だ。
他の研究員からはコクピットと揶揄される目金の自室は、いつでも空気正常装置で無菌状態に保たれている。
ハローハロー。カメのカイジューのアイコンが視界の端で点滅する。ハウアーユー?都築は悪趣味だ。
端末が電子音を立てる。血液中の糖分量が減少している。栄養摂取だ。あと睡眠。グッドラック。カメが消える。
床に足を下ろすとウインドウが一斉に閉じた。まっしろい壁がところどころ波打っている。
窓の外を見るとくらげがのったりと基地に戻ってきた。ああ、とため息をつき、流動食を手に取る。まずい。

【ぬるい眠り】
ジャンク屋を巡るのは楽しい。影野は通路にしゃがんでぼうっとペーパーバックをめくっている。
大昔の再生・録画機器や、受像機、記録媒体。ペーパーに印刷された固定情報。
自分の家は周囲の人間からはとの家、と呼ばれている。壁を一面ぶち抜いて、金網を張ってはとが棲めるようにした。
リアルコンタクトを取るのが苦手だからけものに逃げた、と、保護観察員から言われていることは、知っている。
そう思っているなら思わせたままにしておく。勝手なことばかり言う、前世紀産まれの化石のような連中だ。
どろどろに伸びた髪を切らないままにしてあるのだって、すきに語ればいい。臆病だと、そればかりだ。
このジャンク屋には、ときどきひと学年下の、赤毛の痩せっぽちな少年が訪れる。無口な少年だ。
彼のように、茫洋と、刹那的に生きてゆくことができない。いつでも地を這う、泥くさい人間だ。影野は。
ペーパーバックをめくる指先が、けものくさい、と思った。はとのにおい。はとの家。
けものに逃げることのなにがいけないのかと思う。昔むかしの前世紀、ひとは食うためのけものを飼っていたくせに。

【卵】
週に三度の物理的接触は、それを億劫がるたくさんの生徒がいるのだが、木野はその点では大変な優等生だ。
学習記録の提出も怠らず、課されるカリキュラムの進度もスムースで、理解力なら同年でトップクラスにいる。
しかし彼女が保護観察員のリストに名を連ねているのは、ひとえに素行の著しい不純さのためだった。
人口壁に囲まれた夜の河原で行われた行為について、彼女はなにも言わなかった。汚れた足の裏をして。
すぐに全身のスキャニングと血液検査を施され、無菌室で一週間尋問されても、木野は黙ってそれに耐えた。
健康で優秀で、うつくしい容姿の彼女に、手心を加える大人ではなかった。ひどいことをされた。何度も。
それでも木野はリアルコンタクトを恐れない。週に三度、必ず学校へ顔を出す。優秀な学習記録を携えて。
呼び出しには応じなかった。うつくしい少女だったために、呼び出しは退けられた。大人によって。
今では子どもはがらすの子宮で作られる。そのことは国民のほぼ全てが知っていた。
木野秋はトリプルAだった。それでも呼び出しは退けられる。彼女がうつくしくて、クレバーであるために。

【マイスイートホーム】
体面と体裁のための慈善行為の成れの果てが、このすばらしく居心地のいい監獄のような家だ。
音無春奈は孤児だった。慈善家として有名な実子のいない政治家に拾われて、そのときにはじめて人間になった。
その政治家には、音無と同じく孤児院からやってきた六人の子どもがいて、全員が家をあてがわれている。
ハウスキーパーが三人もついて、学習端末の完備された、完璧な、夢のような家。
音無は毎日そこでぼんやりと暮らしている。ひとりの家だ。養父は六人の兄弟の家を順番に回っている。
犬を飼おうかと養父に言われて断った。そうか愛護動物飼育基準を満たしているのか。それだけに関心した。
無口なハウスキーパーは定時に来て家事をしてマニュアルどおりに料理を作り定時に帰る。はなしたことはない。
学習記録はその基準時刻をいつもオーヴァーして、養父には勉強熱心な子どもだと思われている。
犬なんか飼ったら殺しちゃいそうだからなぁ。音無はソファに横になる。動物なんてきらい。
リアルコンタクトが待ち遠しい。友達なんかいないけれど、とにかく外に出たかった。どこでもいいから。

【夜ははるかの彼方に】
都築というのは変人で、少林寺の住む廃ビルのワンフロアに勝手に住み着き、そこを勝手にぶち抜いて改装してしまった。
オーナーの華僑(楊という名前だ)は都築を毛嫌いしているが、都築はちょっと変わっているのでなにも言えないでいる。
しょうりんはさぁ親とか働いてて大変だよねぇ。のん気な口調の都築にスパナを手渡し、少林寺は首をかしげる。
そういえばあたしの友達に目金ってのがいるんだけど知ってる。知らない。学年違い。あそうか。
あれもねぇ大変なんだよ。親働いてて。親働いてるのが大変なの。そうだよ、大変。お金稼いでるんでしょ。
あたし自力で稼いでるからヘーキだし。都築は飛び級を繰り返して今では大学の博士号まで持っている。天才だ。
ねーこれ見て。改造中のディスプレイに怪物が点滅しながら映っている。なにこれ。カメのカイジュー。
ジャンク屋によく落っこってるよ、こういうの。ペーパーバックとか?高くて買えないよ。興味ないし。
ふといケーブルをボルトでしっかり固定し、よっしゃーと都築は伸びをする。終わった。そう。少林寺も立ち上がる。
次の物理接触一緒に行っていい?と問われたので少林寺は断った。理由はないけれど、なんとなく、嫌だった。

【ぎやまんの壷に盛られて】
鬼が出るんだってさ。鬼ってなんだよ。しらねぇ。なんか出るんだって。内臓くうんだってさ。
松野の言葉に半田はげえといやな顔をした。内蔵?って、人間の?そうだろ。たぶん。フヒヒと松野はわらう。
今どき天然肉くう人間なんかいねえっつうはなしなんだけどな。な。天然肉とかきめぇ。人口肉まじいけど。
おれら成長期だから肉とかくっとかないとだめなんじゃね。でも摂りすぎると診断で引っかかるだろ。
それより鬼だよ、鬼。隣の過程の女子がさ、それで呼ばれてんだって。トリプルAだから。うげ、まじかよ。
内臓抜いてくうんだってさ。半田がその言葉に、たぶん無意識に腹に触れたのがおかしい、と思った。
前世紀にセンソーってのあってさ、そんときは人間が人間の肉くったって。あたまおかしいんじゃねえ。だよな。
あーあんまリアルコンタクト長いと観察員に記録取られる。半田が端末を見て、なにか操作する。じゃあな。
鬼が来て子どもの内臓をくうらしい。松野も半田もAダッシュだから、関係ない。肉をくう子どもだから、関係ない。

 


夜にはアリスが来てくらげを食べてしまう。

 

そして少女はおおかみに食べられてしまった。

 

(めでたしめでたし)

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