ヒヨル ショーコチャンとぼく 忍者ブログ
女性向け11文章ブログ。無印初期メン多め。 はじめての方は「はじめまして」に目を通してください。
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ショーコチャンとの出会いは住宅街の中のちいさな公園だった。すべりだいの下にうつぶせに倒れているショーコチャンを見たとき、おれはおおいに驚いて、えっなんでなんで?なにやってんの?とあたまの中を疑問だらけにした。無視しようかとも思ったけれど、ほっとくと後味がわるそうだったので、どうかおれがやったと思われませんように、と周りを不自然なくらいにきょろきょろ見ながらそおっとショーコチャンに近づいて、声をかけた。ショーコチャンは雷門中の制服を着て、オレンジ色の靴下をはいていた。たっぷりしたつやつやのボブの、毛先だけが外側にほんのちょっと跳ねている。ショーコチャンはすべりだいの上から落ちて痛くて悔しかったからそのまま寝ていたのデスヨ!とわけのわからないことを言って、だけどけがをしてるみたいだったから家までおぶってあげた。うひゃぁぁこんな親切な殿方に出会えるなんてー!とじたばた暴れるのでへんなひとだなぁと思った。ショーコチャンはとてもへんなひとだ。
次の日にわざわざショーコチャンは教室までお礼に来てくれて、そのときに携帯のアドレスを交換した。けがは全然平気みたいでぴんぴんしていたから、お礼なんていいよーと言ったけれど、それじゃあわたしの気が済まないので!さあ!さあ!とごり押ししてきたよくわからない戦隊モノの武器的なおもちゃを勢いに押されて受け取った。ぼたんを押すと光って鳴る。目金さんが喜びそうだと思った。ではまた放課後に!ショーコチャンは高笑いを上げながら行ってしまった。また放課後に?なんとなくいやな予感がして部活が終わったあとにひとりでこっそり裏門から出たら、予想どおりというか予想外れというか、ショーコチャンはそこにいた。遅いぞ!指さされておれはちょっとびびる。ショーコチャンは手作りっぽいへんな仮面?紙で作ったやつをつけて道のまん中で堂々とポーズをとっていた。
ショーコチャンはおれを見て、とおっ、とむやみに掛け声なんかかけながら走ってくる。壁くんにも作ってきたからあげるね、とショーコチャンは自分が着けているのとおんなじ仮面を鞄から出した。折り目がついてへたっている、その額には2、とでかでかと書かれている。打倒ヤッターマンとかなんとか言いながら、ショーコチャンは仮面をはずしてにっとわらった。八重歯がおおきい。壁くんと一緒なら宇宙だって救えちゃうねっ!おれは目をまるくして、なんとも言えない気持ちがこみ上げてくるに任せてわらった。わるい気はしない。ショーコチャンのハリケーンみたいな勢いに一方的にめしゃくしゃに巻かれて、それでも全然わるい気はしなかった。パトロールは一緒にやるもんだぞ2号、とショーコチャンが言うので、おれはその日もショーコチャンをうちまで送った。
知ってるよーと音無がハエ叩き片手に蚊を追いながら言う。ツツさんでしょ。ツツ?ジャンプを読んでいた宍戸が顔をあげる。壁山、ツツのこと知ってんの。うんと頷くとふたりは顔を見合わせた。なんか。な。意外すぎて。そんなに意外かなと問いかける壁山に、ふたりは揃って首を縦に振る。まさか壁山がな。あのひとちょっと変わってるから。ショーコチャンは自分のことをショーコ隊員と呼ぶので、壁山はなんとなく彼女をショーコチャンと呼ぶようになったのだが、それに名字がつくといきなり彼女の存在がうそっぽくなることに壁山は驚いた。ツツショーコ。へんな名前。
ショーコチャンはその日もこっそり壁山を待っていたので一緒に帰った。両膝をはでにすりむいている。どうしたの?転びましたのです!いたくない?ヒーローは強いから平気なのだ!八重歯を見せてわらうショーコチャンをじっと見て、そのすり傷だらけの手を壁山はそっと取る。痛いような思いで。どえええ2号!?なっ、なに。どうしてショーコ隊員の気持ちがわかったのだ!?ショーコチャンは目のあたりをあかくしながらそう言った。壁山はまばたきをする。わからないっす、ショーコ隊員。ショーコチャンがのけぞった拍子に手があごに当たって痛かった。公園で手と膝を洗ってやると、ショーコチャンはまたすべりだいに登る。あぶないよ。あぶなくないでござるぞ。またけがするって。壁山の言葉にショーコチャンはにっとわらい、ひと息にすべりだいから飛び下りた。鳥みたいに。
ショーコチャンが変わったのは二年の夏休みのあとからだった。髪の毛を染めて化粧をして、学校に来たり、来なくなったり、遅刻したり、来てもすぐいなくなったり、するようになった。ちょっと前まで壁山に彼女ができたと騒いでいた同輩たちは、そのあまりにも劇的な変貌に口をつぐみ、いっそ哀れむかのように壁山を窺ったりしたが、その代わり壁山はなにも変わらなかった。壁山がいるところにショーコチャンはいて、それは例えば合同授業とか、体育の見学とか、そういう、些細な時間だけだったにも関わらず、必ずその些細な時間を見逃さず、ショーコチャンは壁山を見ていた。夕焼けがひどくあかかった日、壁山は校門でよその学校の生徒に呼び止められ、これショーコに渡しといて、と言われるがままに通学かばんを受け取った。根元がくろくなりかけた金髪の、不健康に痩せた、鶏がらみたいな男子生徒。壁山はだまってそれを受け取り、そのとたん、男子生徒のからだがぐらっと揺れた。ショーコチャンが後ろから彼を蹴飛ばしたのだ。
化粧をしたきらきらの金髪のショーコチャンは男子生徒の胸ぐらをつかんで道に突っ放した。ヒーローとは思えない言葉で口汚く彼を罵った。目のあたりをあかくして。息を切らし、そして壁山を見て、泣き笑いのような顔をした。ショーコチャン。壁くん。がさがさに荒れた声。ショーコ隊員には、すきなひとがいたのですよ。壁山はなにも言わずに、そのちいさな手にかばんをそっと手渡した。ショーコチャンは夕焼けみたいに鮮やかなオレンジ色の靴下をはいている。ショーコ。鶏がらの男子生徒が立ち上がる。行こうぜ。あんなに怒鳴られていたのに、彼はちっとも怒ってないみたいだった。ショーコチャンは彼を見て、そして彼に引っ張られるようにして行ってしまった。何度もつまづいて、転びそうになりながら。
壁山はひどくやるせない気持ちに、痛いような気持ちになりながら、ふたりが見えなくなるまでそこに立っていた。せめてショーコチャンの前では、なにも知らないしわからないふりをしていたかった。ショーコチャンは両膝におおきな絆創膏を貼りつけていた。もう、あの日のすべりだいみたいに、壁山が受け止めてあげることはできない。手作りの仮面のヒーローだったショーコチャンは、今は違う仮面で戦っている。壁山のしらない場所で。ショーコチャン。ショーコチャン。ぼくにもすきなひとがいたのですよ。ショーコチャン。さよおなら「笑子ちゃん」









ショーコチャンとぼく
津々笑子。モデルはマミーズと某おともだち。オリキャラ失礼しました。
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無印雷門4番と一年生がすき。マイナー愛。

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