ヒヨル きみがしんだら 忍者ブログ
女性向け11文章ブログ。無印初期メン多め。 はじめての方は「はじめまして」に目を通してください。
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まだちょっとおかしい、というようなことを言われて、栗松はグラウンドの外で宍戸とリハビリを兼ねたストレッチをしている。栗松は今日ひさしぶりにほんの少しだけグラウンドを走って、だけどそれ以上のプレイを止めたのは響木監督だ。響木監督は栗松を呼んでふたつみっつ質問をして、ちょっと考え、やっぱり今日は外にいろ、と言った。栗松は別段なにを言うでもなくそれに従い、今はくっついたばかりの足首をゆっくりと回している。自分のからだのことは自分がいちばんわかる、というやつだろうか。せっかく戻ってきたというのに、栗松は特にどんなことをはなすでもなく、おまけにあっという間にグラウンドを出たものだから、どことなく拍子抜けした空気のまま目金はだらだらと部活をしている。ダメガネ避けろ!その声にびくっと振り向き、目金ははじかれたようにあたまを抱えた。頭上をすさまじい勢いでボールが通りすぎる。松野はにやあっといやらしい感じにわらった。次も避けろよ。目金は髪の毛を撫でつける。あんまぼーっとすんなよ、と染岡が目金の背中をかるくこづいた。
いちばん最初に怪我をしたメンバーや染岡は、早々と怪我を治してキャラバンに合流している。怪我をしたタイミングが他よりちょっと遅かった風丸や栗松は、最近ようやくグラウンドに出てこられたばかりで、まだ本格的に動くことは止められている。今日はキャラバンのメンテナンスのため、一同は雷門中で響木監督預り。次の試合に向けて紅白戦でもやろうか、といったところだ。さっきから黙々と駆け足縄跳びをしている風丸が手を止め、ストレッチ中の宍戸と栗松を覗きこむようにしてなにやら言っている。栗松が尻を払って立ち上がり、縄を受け取ってかるく跳びはじめ、風丸は反対にその場にすわり、宍戸と一緒にストレッチをはじめる。後頭部をボールでぽんと叩かれたのはそのときで、目金が振り向くと不機嫌面の円堂が立っていた。あ。目金がなにか言う前に円堂はくるりときびすを返し、リハビリ組の方へあるいていってしまう。二言、三言、円堂があんなにこわい顔をしていなければいいと目金は思った。
そのうち宍戸はベンチへ戻り、風丸は円堂になにやら頼まれた風で部室へと引っこんだ。特になにをするでもない様子の栗松のこめかみをかるくげんこつで突っ放してやってから、円堂は思いきりグラウンドにボールを投げ込んだ。紅白戦!くじ引きするぞ。風丸がビブスを抱えて戻ってくる。おまえベンチな。円堂は目金を見もせずに言う。スコアラーやってくれ。タイムは宍戸がやるから。あ、はい。あっと、栗松くんは。風丸と審判。そうですか。円堂は肩ごしにちらりと目金を見て、しかしなにも言わずに去った。ベンチでマネージャーがくじ引きの用意をしている。ふと視線を巡らせると、手持ちぶさたに縄を結んだりほどいたりしていた栗松と目が合った。栗松はふいと目を反らし、長めに結んだ縄をぐるぐる回しながら、同じタイミングで足首を回している。つまらなそうだ。後ろからはくじ引きで分かれたチームがそれぞれ作戦会議をしている声が聞こえる。
つまらなそうですね。え?目金は小走りに栗松に駆け寄る。退屈ですよね。あ、まぁ。足は。やーまだなんか、ちょっと。いたいですか。いたくはないです。栗松は照れくさそうにわらい、それを隠すみたいに足首を回した。紅白戦、出たかったですか。足引っぱるよりは審判のがいいでやんす。目金はちらりと栗松の足首に視線を落とす。栗松くん。顔を上げると栗松も目金を見ていた。サッカー、まだすきですか。はぁ。栗松は唐突なその言葉にぽかんと口をまるくあけ、すきですけど、といぶかしげに言う。栗松くん。目金はまじめな顔をする。きみがしんだら、きみの星にはぼくが名前をつけてあげます。はぁ?栗松は眉をひそめる。目金さん、大丈夫ですか。きみこそ。目金は音が出るほど唐突に栗松の肩をつかんだ。ぼくは嫌なんです。あんまり心配かけさせないでください。きみがいないと心配です。わかってるんですか?栗松は唖然として、ゆっくり首をかしげる。目金さん、ほんとに大丈夫で、すか?
せんぱーい。その声に目金は振り向いた。宍戸が手を振っている。オーダー表きました。はーい。とりあえずそちらに返事だけして、目金はもう一度栗松をじっと見た。知らない生きものを見るような、栗松の不穏で不審な目。きみがしんでも、きみの星はぼくが必ず見つけてあげます。栗松はあいまいにほほえみ、試合はじまりますよ、とからだをよじった。目金はそっと栗松から手を離し、それでも未練たらしく栗松の腕にほんのちょっと触れる。言葉の意味を、栗松はなぜ問わないのだろう。どうして問いかけてくれないのだろう。ベンチに戻ると、宍戸は明らかにいらついていた。オーダー表はちゃんとファイリングされ、ホワイトボードにフォーメーションまで書いてある。優秀ですね。言ってから、皮肉っぽかったな、と思う。ぼくねぇ。目金はひとりごとめかしてちいさく囁いた。栗松くんが戻ってきてくれて、嬉しいんですけど、よくわからないんです。なんでなんですかね。どうして、もう戻ってこなくていいなんて思ってたんでしょうね。
栗松が戻ってこないなら、戻ってこなくてもよかった。もういなくなるのは嫌だった。それだけだった。
(だから、もう、いかないで)
ホイッスルが鳴る。
みんなみんなしねばいいのに。







き み が し ん だ ら
目金と栗松。
執着と怨みと独占願望。
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