ヒヨル 剣のひと 忍者ブログ
女性向け11文章ブログ。無印初期メン多め。 はじめての方は「はじめまして」に目を通してください。
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あれはおかしくなってしまったのだ、とはチームメイトの言である。
確かに前から女という生き物を心から愛して敬い、何よりも貴ぶ男ではあったが(、そしてその割に、なぜか報われることがほとんどない男でもあった)、特定の個人にそこまで入れあげたことがかつてあったかと言われれば、首をかしげる。フェミニストな彼の愛は、女という生き物のすべてに注がれる普遍的なものであると、誰しも疑っていなかった。おなじチームで長くサッカーを共にした自分も、だ。
そもそも彼は騎士でありサッカープレイヤーである前に1人の男であるのだから、そのうちに特別な想いが芽生えたとしてもなんら不思議ではない。むしろ非常に自然な現象ですらある。それでも、何故、とチームの誰もが思う。彼の姿。1人の女に入れあげる1人の男であるエドガー・バルチナス。彼から某かが奪われたなどと野暮なことを言うわけではない。むしろ、こうと決めた相手には剣のようにまっすぐにひたむきに突き進む姿には、ただ1人の愛する者に剣を捧げる騎士のあるべき姿すら浮かぶようであった。騎士を称する彼をその場所に駆り立てたものが、ただ1人の異国の女だったことだけが、言葉には表すことができず拭いきることもできない奇妙な違和感となって、彼の周りに漂っている。妙に高揚している彼が、普段通りに振る舞うほど、その普段が浮いてしまう。騎士でありサッカープレイヤーである彼が、ふと綻んだ、と言えなくもない。ただ、今までの彼を知る者であれば、それは確かに違和感でしかなかったのだが。
勉強している、と彼は言った。彼女の国のこと、彼女の国の文化、彼女が愛しているものたちのこと。彼女にまた会うために。いいだろう、と彼は肩越しに笑った。レディが作ってくれたんだ。差し出された携帯電話の液晶画面には、どろりとしたソースがかかったパンケーキのようなものが映っている。今度これを食べに行こうと思っている。ああ、どうせならみんなで行こうか。あの国にはエンドウがいる。再びまみえるのも悪くはないだろう。右頬だけで笑って、彼は携帯電話を閉じる。騎士でありサッカープレイヤーである彼の笑み。それをそんなに会いたいのだろうか。彼女の国。彼女の文化。彼女が愛しているものたち。そして彼女。彼女に会うために変わってしまった、彼女を愛しているらしいエドガー・バルチナス。
(狂ってしまったのだろうか)
狂っていたというなら、それはこちらも同じだろうか。騎士でありサッカープレイヤーである自分たちは。誇り高く汚れを知らないはずの自分たちは。エドガー・バルチナスは。ただ1人の異国の女のために、それを捨てるというのだろうか。
(狂ってしまったのだろうか)
ふ、と微笑むと、その気配に気づいたのか彼はまた肩越しに振り向いた。どうした。どうもしない、と言う代わりに、彼のこめかみを軽く突っ放した。それならそれで構わないと思った。あれはおかしくなってしまったのではない。おかしくなってしまったのは、自分たち全てである。あの国には自分たちを負かした者たちがいる。あの国の、敗北の泥にまみれた自分たちは。










剣のひと
イギリスの彼ら。
リクエストありがとうございます!遅くなって申し訳ありません。エド→リカがとても好きです。
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