ヒヨル イキロテレパス 忍者ブログ
女性向け11文章ブログ。無印初期メン多め。 はじめての方は「はじめまして」に目を通してください。
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そういえばしんとした場所にあれがいないと不安になるのだった。騒がしい中で音の少ない方をたどってゆけばいつも自然とあれのところへゆけたのに、この場所はどこもかしこも騒がしくて辟易したのだ。そういえば。おなじように針のような苛立ちをたどるといつも円堂にたどり着くので、最近はそこばかりにいて下へ下へ突き進む円堂の機嫌をなにも言わずに眺めるばかり。円堂も複雑なのだ。だから苛ついている。生きていた祖父、ままならない試合、なにより、周りがよってたかって自分に吹き込んでいた嘘。円堂も大変だ。みたいなことを言うと円堂は世の中の不平不満が凝り固まったようなどろりとした目でこちらを見る。睨むほどの馬力も湧いてこないらしい。なにも言わないのは円堂が円堂のあたまの中にぎっしり詰め込んだ感情が、彼のそれとおなじものであることを感じ取っているからだろう。そういうものは、あらゆる疲弊においてむしろ冴えざえとしてくるのだろうか。円堂は日本に帰りたかった。そして、染岡も。
少し前に送ったメールが時差とかナンとかで返ってきたのが今朝の早朝。どうということもない。あれは話題づくりが本当にへたくそで、だからだろうか昨日の朝食はパンだったなどと焼きたてのトーストの写真を送ってきて、小麦に焼けたその表面がバターでうすく光っているのが妙に胸にきて困った、りもした。(のも彼がどう返していいのか迷うような/もちろん話題づくりが本当にへたくそなあれでなくても/メールを送ったせいなのであれは悪くない)にしても郷愁郷愁郷愁、耐えがたい。ちっぽけな携帯電話のこれまたちっぽけなディスプレイから大海嘯がごと溢れ出した懐かしさがあっという間に自分を飲み込みひたひたにふやけさせるのを感じてしまって、だからおれは女々しい、みたいにわざと大きな音で携帯を閉じたら同室の佐久間に嫌がられて、あーやっぱり日本にかえりてえなあ、と円堂にたどり着くのであった。そもそも部屋割りも気にくわないしぬけさくな佐久間の話は長くて嫌になるのだ。
隣に座ってしばし。円堂は丸く口を開いて喉の奥で唸ると立ち上がり、蹴上げたボールを抱えて大股でラウンジを出ていった。それに続くのが何人か。いつものことだ。そのせいで円堂はあひるの先頭みたいに滑稽に見える。似たようなもんかと思わなくもない。まとめて人間に捕まって羽をむしられて焼かれて煮られて食べられる、群れの先頭が、寂しがりというのは、そういうことなんだろう、みたいな。だったらあの頃のおれもあれも、そういうことだったんだろう。いつか焼かれて煮られて食べられる、のを、知らないのは自分たちばかりだった。そんな気がする。今となっては。円堂に続いてこんなところまで来てしまった自分と、なにも言わずに円堂を見送ったあれがいて、(本当は)ごく自然に行われた淘汰の中で、たくさんのものを蹴落としながら、郷愁郷愁、郷愁、などと。いきなりがらんとしんとした場所に、あればかり探している、これは寂しいのでも郷愁でもないのかもしれないと、影野ならひそやかに嘲うのかもしれない。(あーーーーーーパンくいてえ)









イキロテレパス
染岡と円堂、ときどき影野。
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