ヒヨル いちねんせいのはなし 忍者ブログ
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ときどき彼がいたいのをこらえているような顔をすることを、栗松はかなしいというよりもっと単純に、つらいな、と思う。それは確かに友達だけれど、それでも口に出せないことなんてたくさんたくさんあって当然で、けれどそれが今までよりもずっと重たくて、しかもあとに引くから困ってしまう。ねー。今日もまたむっつりと考え込んでしまっているちいさな肩に自分のそれを横からぶつけて、栗松はかくんとあたまをそちらにあずけた。ボリウムのある動物のしっぽのようなふとくながいポニーテールが、栗松の首のあたりをさわさわとこする。なに考えてんの。別に。少林寺は栗松を寄りかからせたまま、ちいさなてのひらを膝の上でぐーぱーぐーぱーしている。別にって。ひひっとすこしわらって、栗松はからだを起こす。首のあたりに無意識に手をやった。少林寺の髪の毛はまっすぐで、やわらかくてこそばゆい。身長も体重も世の13歳の平均を下回るであろう栗松に比べても少林寺はかなり小柄で、しかしそのスパイクはからだのわりにおおきい。ながい髪の毛も相まってアンバランスに見えるのに、少林寺は足がものすごくはやい。それにかわいい顔をしているのに気がものすごく強いし、サッカー部の誰よりもやさしいのに、それを懸命にかくそうとする。スパイクをかかとでかぽかぽさせて、ああーうっぜーと少林寺はてのひらをすわっているベンチに叩きつけた。隣にすわる栗松はからだをすくませる。なに、それ、おれ?ちげーよ。じゃなによ。つかとりあえずほんとうざい。だからなにが。おれが。まるくすべらかな少林寺の頬に、そぐわない苛立ちだか焦燥だか嫌悪感だか、そんなようなものがべっとりとはりついてこごっている。おまえは別にうざくねーよ。言いながら少林寺は立ちあがって、思いきり右足を振った。かぽかぽのスパイクが少林寺の足からすごい勢いでとんで、ロッカーにぶちあたってひどい音をたてる。おまなにしてんだよ。なにごともなかったみたいにベンチにすわりなおす少林寺のかわりに、栗松が立ちあがってスパイクをひろう。ほらよとそれを差しだした栗松のユニフォームのわき腹のあたりを、少林寺のちいさな両手が握りしめ、そのまま栗松の腹に、少林寺は額を押しあてた。栗松さーおれのことあたまおかしいっておもった?くぐもった声がして、栗松はスパイクをそっと地面におとした。歯とコンクリートのふれるかつんとたかい音が、狭い部室にやけにひびく。おもった?なにを問いたいのかをはかりかねて、栗松は戸惑った。おもわねーけど、なんで。だっておれ。腹のあたりがあつい。ぎりぎりまでこらえたため息を、少林寺はゆっくりと、ふかく、ながく、吐きだしていく。だって、おれ。いつのまにか栗松の腰に少林寺のほそい腕がまわされて、ぎゅうとユニフォームがよじれる。あのひとがいない方がうれしんだ。なんでだろ。あつい息をこぼしながら、少林寺は考え考え言葉を続ける。そやって思っちゃうのが、まじで、うぜぇ。うぜぇ。ひとりごとのようにつぶやきながら、少林寺は栗松の腰に額をぐりぐりとこする。前髪がきっとくしゃくしゃになってしまうなと思いながら、栗松は手をのばしてポニーテールをそっとすく。指がいくらでもずぶずぶとしずんでいって、栗松の気持ちもおなじくらいふかくふかくしずんでいった。少林寺が言わんとしていることをわかってしまって、それをわかってしまったことが、栗松は少林寺の感じているいたみとおそらくおなじくらいだけ、かなしい、と思った。口にだせるだけ少林寺は栗松よりずっとずっとつよいし、痛いのをこらえているような顔をしながら、それでも少林寺はないたりしないのだ。少林寺がうっとうしがるその感情を、栗松はきらうことさえも諦めていた。栗松の腕がやわらかく少林寺の背中をおさえる。ちいさな背中に、心がよじれた。栗松。ぽつりとこぼすように名前を呼ばれたとき、あっと思ったそのときには涙がもうぼろぼろとながれていて、思いきりうろたえる栗松を少林寺のちいさな両手がしっかりとつかまえる。懸命にかくそうとする少林寺のやさしさだって、栗松は容赦なくむき出しにさせてしまう。もうどうしようもなかった。言葉を届けることさえできないふたりには、どうしようもなかった。
おれ栗松のことすきだよ。栗松のそーゆーとこがすきだよ。おれだってなくときは栗松のとこでなきたい。だけどあいつはそーじゃないじゃん。ないてくれないじゃん。
(それでも僕らには方法がない)
(あいつをなかせる方法も、あいつをきらいになる方法だってない)
ずるずるとあとに引くその重さを、あいつがわらいながらどこまでも引きずっていくのに。栗松には、少林寺には、その手を引くことさえもできない。ふたりでぴったりと寄りそって、ああそれでも、それでも足りない。けっ飛ばしたスパイクが立てた音が、とっくに沈黙に飲み込まれてひえていく。ぐずぐずにいたみながらたちきることができないでいるそれを、ふたりでわけあうことができるなら。少林寺のはだしの指さきが、栗松のふくらはぎのあたりをかすめた。いたみとは、このくらいでないとあふれだしてしまう。あいつが飲み込んでなんとかしたものを、わけあうことさえもできなかった僕らには。







痛みとは
栗松と少林寺。宍戸について。
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朝から湿度が高く、寝ぼけたような不快感がいつになっても消えない日だった。壁山が部室をがらりと開けると、中にいたのは宍戸ひとりだけだった。肩甲骨のめだつしろい背中が、ほこりくさい部室のすみにかがんでいる。すぐそばのロッカーが半開きになっていて、学ランの袖がだらりと垂れていた。なにしてんだ?おー壁山、うす。うす、でなにしてんだ?いやさ。素肌をむき出しにした上半身をかがんだままひねって宍戸が振り向く。ごちゃごちゃとなんだかわからない備品が積み上げられ折り重なった、マネージャーですら手がつけられない一角だ。
ねこが。ねこ?たぶん。そこに入った?たぶん。なんかはっきりしないな。おれもはっきり見たわけじゃねーんだよ。立ち上がった宍戸が困ったように頭をかく。壁山は山のように積み上がったその備品だかごみだかをうえからしたまで眺めた。今日は二年生の授業は、あと一時間残っている。自分ならこれをいったんどこかにどかして、また戻すことができるだろう。先輩が来る前に。どーしたもんかなかわいそうだよな、と、中腰でうろうろと隙間を覗いている宍戸にそれを提案する。おれこれどかそうか?え?いや、宍戸かわいそうって言うから。どかしてみるかと重ねて提案すると、じゃおれも手伝うと宍戸はてっぺんのつぶれかけた段ボールに手を伸ばす。あ、あ、そこはおれがやる。バランスを崩して箱を取り落とす前に、宍戸より背の高い壁山が手を伸ばしてそれをどかす。持ちあげた箱を地面に置くと、ほこりがぶわっと立ちのぼった。中にはだいぶ年代物のユニフォームが、かびやらほこりやらでよくわからない物体にばけて眠っていた。げえ、という顔を見合わせて、だけどそのとき、隙間から確かににゃあという鳴き声がしたのだ。
宍戸が腕を伸ばすたびに、うすいひふからあばらが浮いて見える。骨ばったひじや肩がよく動くな、と壁山は感心する。学ランを脱いでシャツを二の腕までぐしゃぐしゃにまくり上げた壁山の腕はがっしりとして、宍戸のそれより何倍もふとい。山はあらかた崩されて、宍戸のうすい胸板をほこりの混じった汗がいく筋もながれた。やべぇだるい。両手をしろい腰に当てて宍戸が首をかるくひねる。練習前に重労働だったな。だな、ねこまだ?出てこないな。壁山もシャツのボタンをみっつほどあける。湿度が高くてあつくるしい。気休めにあけた窓からは、風すらも入らない。積みあがった箱からは、一番うえにあったユニフォームの残骸と似たようなものが山ほど出てきた。どろどろに腐ったスパイクだの、かびや虫食いで箱と癒着した靴下やアンダーだの、きいろやあおやむらさきに変色したぺたんこのサッカーボールだの、錆びだらけでまっかになったダンベルだの。それらいちいちにうぇぇとかげぇとか言いながら(ときには悲鳴もあげたりした。てのひらほどのクモが壁を伝って窓から外に逃げていったときには、ふたりとも腰を抜かすほど驚いた)、しかしふたりの努力の成果でかの魔窟はそのほとんどを白日のもとにさらしていた。これマネージャーにやってもらわなくて正解だな。これはさすがにきついだろ、なんの兵器だよ。宍戸が足で、もうなにが入っているのか見たくもない段ボールをちょっとつつく。にゃあ。ほこりだらけのねこが崩された山の隙間から走り出てきたのはそのときで、宍戸と壁山のあいだをあっという間にすり抜けると、これまたタイミングの悪いことにたまたま入り口を開けた栗松と少林寺の足元を、しろい弾丸のように駆け抜けていった。伸ばしかけた宍戸の手が半端に宙にとどまって、ふたりが驚く声が遅れて届く。
あーと声にならない声を上げて壁山は宍戸を見る。同じような表情をした宍戸も壁山を見たので、ふたりでかくんとうなだれた。まっいーけどな。無事っつか元気だったな。だな。うわぁなんだよこれ。少林寺がばらばらに置かれた段ボールを覗き込んで眉間にしわを寄せる。これお前らがやったの?そーだよと宍戸はロッカーからタオルを取り出し、それでごしごしとからだじゅうにまといついた汗やらほこりやらをぬぐっていく。これ全部ごみに出したほうがいいよ。はぁーと感心ともなんともつかないため息をついたあとに栗松がそう言い、マネージャーに頼もうかと壁山も取り出したタオルで首や顔をこする。片付けるよりもこのまま処分してしまったほうがよさそうだ。なにせ中には得体のしれないものが果てしなくつまっているのだから。
あきれたようにそれらを見回していた少林寺が、宍戸ケガしてるよと言った。え?腕をあげてからだを見下ろす宍戸のわき腹に、あかい傷がすうっとはしっていた。かどでひっかいたのかなと宍戸はそこをてのひらでおおう。はだかでそんなことするからだろ?つーか服着ろよお前、壁山もなんで言わねーんだよ?少林寺に見上げられて、壁山は言葉につまる。あついからいーんだよと宍戸が少林寺の髪の毛をくるくるっと手に巻いてひっぱった。備品の棚に入っていたありったけのごみ袋を抱えて、でもケガならなんとかしたほうがいいんじゃね?と栗松が心配そうに言う。いたくないからいいよ。宍戸はかるい感じでわらい、離せよっと少林寺がもがく。
宍戸のしろい背中にはまっすぐな背骨が浮きあがってみえたし、その痩せた首を汗がながれていった。隙間に入りこんだねこのことをたぶん、本当に心配していた。だから壁山がいなくても、宍戸はひとりであの山を崩しにかかっただろう。しろい上半身をむき出しにしたまま。服を着ろとは、あのときは到底言えたものではなかった。それはあの瞬間に部室を開けてしまった、壁山にしかわからない。そしてまたそれを、壁山は後悔さえしていないのだった。宍戸のうすいひふに刻まれたあかい傷を直視することができなくて、壁山は息苦しくくもった窓の外に視線を逃がす。早々に着替えを終えた栗松が、うひゃーとかきたねーとか言いながら、どんどん箱の中身をごみ袋に突っ込んでいった。よどんだ空気はどこにも逃げることはなく、あけ放した窓からは風すらも入らない。あのねこどこにいったのかなと、落ちたつぶやきは誰にも拾われなかった。







マハラジャマック・イーター
壁山と宍戸。
初壁山。すきです。マハラジャマックは羊肉のハンバーガー。
だからそんな気にしてねぇって。と、受け取った月見そばをぐるぐるかき回しながら宍戸は言う。同じく天ぷらうどんを受け取って、店主の好みで適当にのせられた具を汁にぎゅうとしずめながら、あーはいはいと栗松はそれを流す。商店街のややさびれた一角にある、安くてうまいうどんとそばの店でふたり。どうにもあの店でラーメンを食べる気にはなれない最近だ。今注文の品を作りおえて、厨房の奥で新聞を読んでいるおやじのようには、店主と客、という単純な関係が、もうあの店にはないのだった。
いっこ食う?と、サービスなのかなんなのか、栗松の天ぷらうどんにふたつ並んで座っていたれんこんの揚げものを箸にはさんでさしだすと、おっさんきゅーと宍戸は素直にうつわを寄せてくる。素焼きのごつごつした深い宍戸の器と、つるりとした瀬戸物の、広く浅い栗松の器が並ぶ風景はどことなくおかしい。宍戸はわり箸をいつも口にくわえてぱきんとわる。その仕草がなんとなく大人びて見えて、栗松もそれをまねてみたのだがこれがうまくいかない。それをするにはくちびるからちょこんと出た前歯が、ややじゃまだ。
今日この店に宍戸を誘ったのは栗松で、それはあの千羽山中との試合の翌日だったから、さすがにあざとすぎたかと栗松は思う。勝てたのは素直にうれしいと思うが、あんなことになるとは思わなかったのだ。あんなことに。言いたかったことのだいたいは半田が言ってくれたけど、それよりもなおもやもやした気持ちが、ひとばんぐっすり眠った今日もまだ消えない。栗松のとなりでは、宍戸がほとんどなまの卵をといた汁にれんこんの揚げものをひたしてかじっている。みかづきの形にかじりとられたれんこんを見て、栗松も自分のれんこんに同じようにかぶりつく。
数学もうやった?まだ。俺明日提出なんだけど。げっまじで、俺んとこもじゃあもうすぐか。やってたら見せて。だからやってねって。全然?全然。じゃあショウリンに頼むかなー。つかお前は自分でやった方が絶対はやい。俺数学きらいだし。
ずるずると麺をすすりこみながら、言葉すくなに話をする。練習後はとにかく、腹がへって仕方がない。でも宍戸頭いいだろ。そう言うとかみ切れなかった麺がぼとりと器に沈んで汁がはねた。指先でほほについた汁をこすり落としながら、きたねーと宍戸がわらう。つかお前えびのしっぽ食わない派?はぁ?食うもんじゃねーよしっぽなんか。ばっかお前ここが一番うまいんだろ。突き出しのゆずポン味の湯豆腐の(とっくに食い終わった)皿のなかに浮かんだえび天のしっぽを見て、宍戸が栗松のこめかみを拳でぐりぐりとこする。
ごつごつした素焼きの器に引っかかった宍戸の指先があかい。箸を持つその指は、栗松のそれよりもすんなりとしてほそく長く、関節と関節のあいだがきゅっと締まって形がよい。みじかく切られた爪のあいだに、念入りな手洗いでも落としきれなかったグラウンドの土がわずかに残っていて、思わず見下ろした自分の手にもおなじものが残っていたので栗松はすこしだけ安心する。思い通りにプレイのできないもどかしさよりもっと違うものがあの場所にはあって、なのに誰もそのことには触れないように、見てみぬフリをするものだから。もの分かりのいいような芝居をして、勝てばそれでいいとか言って。くたくたで帰宅したその夜、シャワーにざぶざぶ打たれながら栗松はすこしないたのだった。
鬼道さんが入ってくれてよかったよ。宍戸は組んだ両手の上にあごを乗せて、あぶらとほこりのこびりついたはり紙のメニューをながめている。あれで鬼道さんのかわりに俺が出てたら、俺らこんなとこでめし食ってねーって。宍戸の手首には栗松とおなじミサンガが巻きついていて、それを少林寺も壁山もおなじように手首に巻いている。音無が内緒で四人にくれたものだ。意地はって負けてなくってか。俺がやだよ、そんなの。そんなことを言う宍戸の横顔が、箸を口にくわえてぱきんとわる仕草よりもずっと大人びていた。
でも。栗松はこちらも油でべたべたのカウンターの上で手をにぎって、言った。俺はお前と出たいよ。俺と宍戸と少林寺と壁山で、出たかったよ。ひひっと宍戸はわらった。さんきゅー。俺もお前らと出たかったわ。でももう終わったことだしぃめでたしめでたし。組んだ両手をぐうっと天井にのばした。おっちゃんお会計お願いします。その言葉に栗松はあわててカバンから財布を取り出す。百円玉を六枚と五十円玉を二枚カウンターに並べて、ごちそーさまっすと声をあわせる。
店を出たところでふたりの制服のポケットが同時にふるえた。壁山だ、と携帯を見ながら宍戸が言う。栗松の取り出した携帯には少林寺の名前が表示されている。ふたりは顔を見合わせて、同時に電話を取った。
もしもしー?あっ栗松いまどこにいるの?宍戸と一緒にめし食ってたよ。うわやっぱり?ほらー俺の言ったとおりじゃん。話しながら宍戸の様子を伺うと、あーいいっていいってと宍戸がわらっている。どうやら壁山と少林寺も、栗松とおなじようなことを考えていたらしい。つかとりあえずファミレス来いよなっと少林寺は言い放ってさっさと電話を切ってしまい、宍戸もまた携帯を閉じて、つーわけで今からファミレスに行くことになったけど、と栗松に言う。行くよな?あたりめーじゃん。腹は?関係ない。同じく。ひひひっとふたりで顔を見合わせてわらう。
気ーなんかつかってくれなくていいのになと宍戸がひとりごとのように言った。ちげーよと栗松は言う。俺らステキなサッカー部、ってことだよ。あーそれサイコーと、心のこもってない口調で宍戸が言うから、そのひざの後ろを思い切り蹴ってやった。地面にくずれ落ちる宍戸がついた手が、やはりすんなりとしていた。宍戸はいつも飄々とわらっている。心配なんてさせてくれない。うん。ひざを払って宍戸は立ち上がる。俺らステキなサッカー部、だな。
砂でよごれたその手を栗松はつかむ。その指が自分のそれとおなじくらいあたたかくて、やっぱりすこしなきたくなった。手首のミサンガがちらりとのぞいて、ああと栗松は胸にこみあげるものをそっと吐き出す。気なんかつかうかよ、つかってねーよ。かじられたれんこんみたいなみかづきが、ほのかに夜空をかすませている。望むことなどひとつしかない。どうかどうか一緒にいてくれと、その他にはなにも言うことはない。なんにも望むことなんてないのだ。ファミレスが道の先でこうこうと明るく、あそこには壁山も少林寺もいるのだから。そうしてすてきな四人組はいつまでもいつまでも仲良しなのでした。めでたしめでたし。




すてきな四人組
18話に寄せて。栗松の「ヤンス」口調は先輩への敬語と捉えてふつうの口調。
宍戸が抜けてさびしかった。だけど宍戸は心配させまいと振る舞いそうな気がします。
宍戸は家族の話をあまりしない。
練習が終わったら、週に三日くらいはなんだかせわしなく帰ってしまう。宍戸はさほど練習に熱心な方でもないが、プライドのない人間ではないのでそれなりに真面目に練習には取り組む。一年生の中では(規格外の壁山を除いて)背が高くて、なんだかこれからもすくすくと伸びそうな、そんな予感のするひょろ長いからだや手足をしている。
正面から相手にぶつかろうとする選手が多い雷門の中では珍しく、小器用に相手をけむに巻いてしまうようなタイプで、普段なんだかんだと宍戸を叱ったり怒鳴ったりしている染岡さえも、気を抜いたらするりとボールを取られてしまう。
彼女がいるかもしれない、というのは少林寺の談で、少林寺と同じクラスのミキちゃんだかユキちゃんだかいう子と仲がいいと言う。ミキちゃんだかユキちゃんだかは宍戸の幼馴染で、小柄でふんわりとしたかわいい女の子らしい。少林寺のことをあゆちゃんと呼ぶミキちゃんだかユキちゃんだかは、宍戸のことをさっきーと呼んで、話すときにはにこにことわらう。
宍戸はオレンジのひつじのようなふわふわの頭をしていて、それに目がおおわれている。ウール100パーセントっすよ、と自称するその頭ははたいてやるともふっとして、風が強いときにははたくほど砂ぼこりがたくさん出てくる。
勉強はあまりすきではないようだが、やったらやっただけの成果が出るし、サッカー部を勉強ができる順に並べたら、半分くらいには入ってしまう。目には見えない場所での努力、というものか、傍目には全く勉強なんかしていないように見える。
すききらいはあまりないようで、だけれど取り立ててこれがすきだ、と好んで食べるものもないように思える。黙々と食べて、黙々と栄養にする。それでも食べること自体はきらいではないらしく、残しもせずにたくさん食べるし甘いものも人並みに食べる。
あーそうっすね、と宍戸は言った。俺そういうのあんますきじゃないっすから。早々と着替えを済ませて、鞄を肩にかけている。あまり表情が伺えない宍戸は、なんとなくつらつらっとしゃべる。つーか彼女いないっすよ。あの子はただの友達。彼女は欲しいっすけど別に今じゃなくてもいいかなって思いますし、そんなモテる方でもないんでそれはだいぶ先っす。んじゃ今日用事あるから帰ります。また明日。おつかれさまっす。
基本的に明るくて話好きで人当たりのいい宍戸だが、あわただしく早く帰ってしまう日のことを、だけれど誰にも話さない。何をしているのかとか、どこに行くのかとか。
宍戸のスパイクはいつもロッカーの端に揃えられている。先っぽの方が破れかけているので、そろそろ変え時だなと以前話していた。だいぶ前からそんなことを言っていたはずだが、よほど足になじんでいるのか、変え時はなかなかやってこない。
宍戸は家族の話をあまりしない。





むじな
ちょっと意味深な宍戸の話。宍戸すきだ。
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無印雷門4番と一年生がすき。マイナー愛。

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