ヒヨル おとなすぎたきみはげんきだろうか 忍者ブログ
女性向け11文章ブログ。無印初期メン多め。 はじめての方は「はじめまして」に目を通してください。
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目金が殴られている。無抵抗で殴られている。松野がその胸ぐらをつかんで、容赦なくこぶしをふり上げ、うち下ろす。おもくしめった音、かわいた音、目金のみじかい悲鳴、呻き、松野の怒鳴り声、そしてきちがいじみたわらい声。その全部をていねいに、ひとつも意識に残らないように受け流してやりながら、影野は松野の背中をじっと見ている。松野が目金を部室のコンクリにつっ放した。だらりと投げ出されるやせた目金のからだ。血走った目で肩ごしに振り返り、ぺっとつばを吐く。見てんなよ。うん。悪趣味ぃ。松野はぜいぜいとわらう。松野は目金を殴るたびになんだかんだと騒ぐので、声をがさがさにからしてしまう。おれ今日は部活さぼるわ。はらいてー。じゃーまたねんと影野のほほをぴたぴたと叩いて、松野は去りぎわにさらに、うつ伏せにうずくまる目金のわき腹を蹴り上げた。ごほ、とのどの奥で声がつまる。
松野はいつも力いっぱい部室の扉をしめるので、はね返ってまたすこしひらくのが影野はいやだった。手を伸ばしてそっとそれをしめてしまう。目金が呻きながらのろのろとからだを起こす。緩慢なしぐさは虫が脱皮でもするみたいで、だけど顔をあげた目金はそんなものとはほど遠い、ひどい顔をしている。力なく咳き込んでよれよれと立ち上がって、目金はあばらのあたりをかるくおさえた。メガネのレンズははんぶん歯ぬけになっている。影野はそっとてのひらで学ランについた砂をはらってやった。ついでに髪の毛もかるくはらってやると、目金が切れ長の目で影野を見上げて、にやっとわらう。くちびるの端があかく切れている。あおあざだらけの目金。
影野はしろい手の甲で目金のほほに触れた。いたい?いたいですよ。そう。はははとよわよわしくわらって、目金はからだをくの字に折る。しぬかと思った。影野のみぞおちのあたりに額を押しつけるようにしながら、目金はひくくつぶやいた。影野は手の甲をちらりと見る。そこには血のあとがうすくこびりついていた。かわいた鉄。影野は目金を支えるようにして、壁によりかからせてやった。ごめん。あなたが謝ることないですよ。ゆっくりと膝をまげて、目金はくたりとそこに顔をふせる。松野くんはやさしいですよね。くくく、と肩がふるえた。しねしね言いながら、まだそれをぼくにさせてくれない。
がらりと部室の扉がひらいて、めんどくさそうな顔をした半田がぬうと顔をのぞかせた。あー影野。いたいた。わり、ちょっと来て。なに。松野が暴れてやがる。眉間にしわをこの上なくふかく刻んで半田はため息をついた。栗松がボッコにされてんだわ。まじかわいそうだから助けてやって。影野は目金を見下ろす。目金が手をぱたぱたと振る。手の甲の目金の血。わかった。おーさすが影野。駐車場んとこな。半田が指さす方へ、影野は無言でつうと行ってしまう。おめーまた殴られたん。かばんをどさりとロッカーに投げて、半田はなんでもないことみたいに言った。なくなよ。なきませんよ。おまえしぬなよ。松野犯罪者になっちゃうからなと半田は脱いだ学ランをばさばさと振った。くくく、と目金は肩をふるわせる。大丈夫です。まだしにません。
ひらきっぱなしの扉の向こうから、けものが吠えるみたいな声がした。影野しんでないといーねと半田は言った。目金はゆっくりと立ち上がって外へ出ていく。レンズが欠けたちかちかの視界で、影野が松野に殴られている、殴られている。
(あなたほんとは影野くんこそころしたいんでしょう)
ばかなひとだ。






おとなすぎたきみはげんきだろうか
影野松野目金。
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