[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
tanaさまリクエスト、松野と影野。
リクエストありがとうございました。
続きに本文。
おれが目金をいじめてると影野がときどきそれをじっと見ていることがある。おれは目金を殴るし、蹴るし、水とかぶっかけるし、ごみ捨て場とか噴水に突っ込んでもやる。刃物で目金を切ったり刺したりはしないけど、持ち物に対してもそうであるとは限らない。いちど学ランからぼたんを全部切りはなしてやったことがある。目金はさすがに驚いていた。上履きをずたずたに切ってやると目金はそれをその場でごみ箱に投げ込んでいちにちはだしですごしていた。なのでスニーカーも切ってやったら目金はその日はだしで家に帰っていた。ばかだ。前に顔を殴ったときにへんな手ごたえがあったから奥歯折れたんじゃね?と思ったらほんとにそうだった。おたふくみたいに顔を腫らしてきた目金を、おれはさんざんわらってやった。ほんとは殴るのはすきではない。手がいたい。目金はがりがりだし、なんか骨が手にくいこむような気がする。だけど殴るのも蹴るのもきもちいいし、そのくらいのことおれはやさしいから全然気にしない。生きてりゃいーっしょ、と以前聞いてみると、目金は鼻血をだらだら出しながら、そうですね、とうなづいた。そんなおれと目金を影野はときどきじっと見ている。影野はなにもいわないけど、おれがつかれて殴るだとか蹴るだとかをやめてしまうまで、じっとおれたちを見ている。
部活が終わったあと、おれは猛烈にいらついていたので、部室に入るなりスパイクを脱いで、目金の背中におもいきり投げつけた。いっ、とみじかい悲鳴を目金は飲み込んで、おまえまじうぜぇしね、とおれは怒鳴っていた。別に目金がなにをやったわけではない。今日はほんとにふつうだった。ふつうの練習ふつうの紅白戦。お互い別のチームになったので、ボールを奪うふりでおもくそ足を踏んづけることもできた。だけどなんかもうほんとにそれが気に入らなくて、なんてーかふつうすぎたのだ。みんななんでそんなふっつーの顔してやってんの。ばかじゃね。とか。驚く目金の前髪をおれは思いっきりつかんでぐっと引っぱった。ひそめられたほそい眉。そのままからだをつっぱなして、スパイクを履いてるほうの足で蹴った。部室がしんと静まる。みんななんでそんなふっつーの顔してやってんの。ばかじゃね。おれはわらう。目金を蹴りながら。
つめたい手がおれの肩に置かれたのはそのときで、あ、と反射的に振り向いた瞬間におれは殴られていた。ふつうに。あいつのほそい拳がおれの左ほほにまっすぐにきれいに入って、おれはコンクリにしりもちをついた。目金がげほげほ咳き込んでいる。影野がおれの目の前にぬうぼうとつっ立っている。なにも言わずに、じっと。背ぇでけーんだよとおれはいつも思う。あの手がおれを殴った。おれを殴った。殴った殴った殴った。ふっつーの顔、して。おれは跳ね起きてあいつに飛びかかった。もうむちゃくちゃに殴ってやった。怒りでもいら立ちでもなんでもなかった。それは言うなればたぶん恋のようなものだった。円堂が風丸が半田が土門がさわいでいる。おれたちを止めようと一生懸命になる。あーもうやめて手ぇ出さんで。おれはそのときものすごくうれしかった、のだ。おまえもこうしてほしかったんだろ。視界のはしで目金が少林寺と栗松に助けられている。目金がなんかわかってるみたいな顔でおれを見ていた。あーまじばかばかばかばかしい。おれの下で影野がどんどんぼこぼこになる。どんどんどんどんおれたちはひとつになる。おまえもう一発くらいおれんこと殴ってくんねーかな。そしたら明日もおれは気持ちよく目金を殴ったり蹴ったりできるのに。おまえのこと考えながら。ふっつーの顔して。
「Kさんって観音さまみたいね」
松野と影野。仏心はばしばし出ています。
松野はADHDのつもりでいつも書いています。