ヒヨル ありがとう、今週中に死ぬ 忍者ブログ
女性向け11文章ブログ。無印初期メン多め。 はじめての方は「はじめまして」に目を通してください。
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きみの手は取らない、という約束であった。焦燥だけは常に背骨のあたりに貼りつけておいたので、あとは回りだすのを待っていればよかったのだ。流されるのではなく自分の意思でせめても進んでいこうとするためにそういう約束をしたのはおのおのそれがこわくてきもくてそういうのだけはやだなぁそういう感じにはなりたくないなぁとうるわしいほどに意見の一致を見たからだったと思う。
(毎日普通に練習して練習が終わったあとも普通に練習した。それは盲目の行進に似ていた。伸び盛りなんて迷信だ。彼らから神はもう奪われていた。)寒気がする。
面倒なことがいつのまにか嫌いになっていたけどそれだけのことです。こんな風に変わるなんて知ってたらサッカーなんてしませんでした。(某月某日・部誌にて、以下空白)
これはおれの望んだ夏だろうかと問いかけたらたぶんそれはそうなのだ。はしってはしってはしりまくったらふとした瞬間にマーライオンみたいに吐く。体力と持久力に難があるからまずは基礎のからだづくりだと、毎日毎日はしりまくった結果がこれだ。あほみたいにからだにそれだけつめ込んだ水が疲労とかあつさとかで胃からせりあがってくるあの瞬間が夏だ。おれの望んだ夏だ。ほかにはなにもない。取るべき手を探すくらいなら一歩でも先に行こうとそのときのおれはもう決めていた。まっすぐな道を脇目もふらずにただはしる。おれにはそれしか残されていなかった。だけどひたはしった先にあるものを、必ずしも望んでいたわけではなかったのだ。きみの手は取らない。神経がびりびりに削られる。病んでひずんで燃えて崩れる。これがおれの望んだ夏だ。
そんなこんなで軒並み痩せた。彼らは中学生であり、どんなに頑張っても十三歳という肉体からは逃れられないのだった。自律神経が夏の日差しにいかれてしまい、熱中症から頭痛や嘔吐や鼻血を引き起こす。食っては吐き吐いては食った。食道が胃酸でぼろぼろに焼けた。盲目の行進はやまず、彼らは敗残兵さながらの絶望を背負ったスーパーノヴァだった。蝉の声がどしゃ降る青色一号みたいなその場所で、彼らは何度も意識を失った。スパイクの穴をふさぐ熱風は、彼らの涙さえも干上がらせた。
きみの手は取らない。そんなこと言わないで。音無のしろい膝が目の前にある。手をにぎる音無のてのひらがあたたかい。栗松がすごいでかい声を上げながら(絶叫みたいな)グラウンドを殴っていた。あんなんやったら手ぇけがするわ、と思ったら後ろから壁山に吹っ飛ばされていた。壁山は両足からものすごい勢いで流血している。見てられない。音無はちいさい悲鳴を、たぶん無理やり飲みこんだ。阿鼻叫喚の地獄絵図。ポカリ持ってきて。くちびるがかわいて逆に腐りそうだった。細胞さえままならない。たぶん木陰に運んでくれたのは壁山だ。音無の手がするっと離れた。グラウンドの真ん中に少林寺がひとりで立ち尽くしている。なんかかっこえーと思った。少林寺からはいい感じの葛藤がにじんでいる。ところで倒れたときにうちつけたデコがいてぇんすけど誰かに文句言うべきなの。それともおれがあほなだけすか。そっすか。
・吹っ飛ばされてだらんと倒れた目尻のあたりが涙でゆるんだ。じゃあどうすればいいの。もっともがけばいいわけ。才能ないんだよとかやっても無駄なんだよとか誰かおれにちゃんと教えてくれ。そうしたらおれは現実をちゃんと飲みこんでわらってみせるのに。もがくにももっとましな風にして、努力ってやつをちゃんとやってみせるのに。なんかいろんなものがえぐられて犠牲になるね。おれたちはいつまでおれたちでいられるだろう。いつまでおれを手放さずにいられるだろう。きみの手は取らないとちゃんと決めたから、それだけはみんな守り抜いていくんだろう。吐き気がこみ上げるし腿がつる。張り倒されたあたまがいたい。っていうか壁山!(だけどだらだら血を流す傷を押さえようにも手がいたい。おれのてのひらどこにあるの)くるしいくるしいくるしいくるしい。夕陽がいたいよ。たすけて。
膝からすごい勢いで流れてる血を確認する前に、ちょっと視線をめぐらせるとセンターサークルからゴールよりくらいに少林寺がぽつんと立っていた。そのからだがゆらゆらっとして、あっと思ったときにはぱたりと倒れる。ああ声かけてやんなきゃと思った。だけどいやがるかなとも思った。少林寺は絶対おれらにはみっともないとこ見せたくないはず。おれだっていたいしつかれたしもういろいろ限界だしで、きっとそんなやさしさをひねり出す元気はない。てんてんとボールがはずんで視界をよぎる。誰もそれをさわらないのに、この場所では規律だけがなまなましく息をしている。夏よりずっとあつく。ずっとつめたく。かべやまぁ。誰かが呼ぶ。じゃりじゃりのてのひらの先にはなんにもなかった。きみの手は取らないとあたまの中でおれがささやいた。音無が少林寺のところでしゃがみこんで、たぶんないている、気がする。それでも。それでもおれたちは負けました明日なんてこなきゃいいのに。
(ひふがざらつく。おれたちの夏です)
わたしの絶叫が聞こえる。






ありがとう、今週中に死ぬ
一年生。
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