ヒヨル なかずとばずの比翼の鳥は 忍者ブログ
女性向け11文章ブログ。無印初期メン多め。 はじめての方は「はじめまして」に目を通してください。
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少林寺は土門がきらいだった。それは少林寺としては、口にも出さずにじょうずに隠してある感情であったが、土門がおおっぴらにそれを口にするために部内の暗黙の了解となりつつあった。あゆむちゃんはおれがきらいだから。な、と同意を土門は少林寺に求めるし、それを聞かれるたびに少林寺はふいとその場を立ち去ってしまう。困ったことではなかった。松野が目金を嫌悪するようには、あからさまに対立したり、けなしたり手や足を出したり、そういった子どもじみたことをふたりは絶対にしない。土門がやたらと少林寺をかまいたがり、撫でたり抱き上げたりするたびに、少林寺が嫌悪感をむき出しにして、過剰とも言える反応でそれを振りほどいたりする以外は。それを見るたびにああ土門が言っていたことは本当なんだなとみんなは納得するし、少林寺の中にある烈火のようなはげしさに肩をすくめたりもする。
あゆむちゃんはかわいいねぇと土門は誰彼かまわず言う。なんかさーあれがいいんだよね、あのつめたいとこ。かけるちゃんとはまた違うじゃんね。全然なついてくれないとこがかわいいと思うし、そういうとこがおれはすきだな。松野はそんなことを言う土門を露骨にきもちわるがったし、半田はあれかわいくはねーだろ、と妙な顔をする。宍戸はまーあゆむはだいぶかわいっすけど、それそーゆーのなんすかねと苦笑する。目金はあんまりからかうのはやめてあげてくださいとにがい顔で言う。あゆむちゃんにさわりたいんだよね。そう言うと余計、みんなは引く。実際に少林寺はそれをひどくいやがるし、くろい目をななめにして土門を無言でにらんだりもする。そういうつもりがないのだと言えばうそになるが、本意は別の場所にある。土門とおなじように少林寺にふれて、だけどそれをむしろ少林寺がよろこんで受け入れる影野のことだ。少林寺は影野をすきだし、おなじように土門も影野がすきだった。
土門は少林寺のそういうところがすきなのだ。影野に対しての気持ちを、どうしてもうまく受け入れられないところが。あゆむちゃん怖いんでしょう。一度、逃げられないように部室のすみに追いこんで、上からのぞき込むようにそう言ってやったことがある。少林寺は土門を見上げて、ひどくいらだたしいような表情を隠しもしなかった。おれはあゆむちゃんがすきよ。だから土門は言いつのる。おれは影野ともできるし、あゆむちゃんともできるよ。してあげようか?やさしくするよ。からかっているわけではない。本気だった。少林寺はその言葉に眉を寄せる。あんた、ほんとにきもいんですね。そのからだに土門は手を伸ばした。少林寺にさわりたい。少林寺はちいさくてかるくて、なんの手応えもない。それがうれしい。学ランの胸ぐらを思いきりわしづかみにして、ささやくように土門は言う。あゆむちゃんもおんなじなくせに。きもいってばかにしてるおれと、おんなじこと考えてるくせに。
誰が信じるだろう。土門はわらう。少林寺がいとおしくてたまらないのだということを。ともすれば影野よりも誰よりも、愛してさえいるのだということを。土門はわらう。君がどれだけあいつを愛そうと、あいつは、世界は、君を愛したりしない。君を守ったり、受け入れたりなんか、絶対にしない。だけど。たとえば誰が君を傷つけたとしても。世界に憎まれてそねまれて、たったひとりになったとしても。不条理と嫌悪感にさいなまれて、死にたいくらい苦しんだとしても。それでも。もがく少林寺に土門はわらう。
それでも、振り向かずにあるいていけ、君だけは。







なかずとばずの比翼の鳥は
土門と少林寺。
土門が影野に抱いているのは性欲にちかいものですが、少林寺に抱いているものはまぎれもない愛です。
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無印雷門4番と一年生がすき。マイナー愛。

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