ヒヨル 燃えるキリンと宇宙象 忍者ブログ
女性向け11文章ブログ。無印初期メン多め。 はじめての方は「はじめまして」に目を通してください。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

練習が休みになったある日、松野は出不精の影野をむりやり引っぱり出した。行き先はスイーツ食べ放題、イチゴフェア開催中をうたい文句にしたカラフルなレストラン。家から出すのにもよっぽど苦労したのに、店構えを見たとたんに影野はいやそうな顔をする。はやく来いよと松野は声をかけて自ら扉を押し開けた。九十分食べ放題。魅惑的なその響きに、魅惑的なオレンジのエプロンのおねえさん。席につくなり松野は立ち上がる。食べなきゃ損だ。ケーキを皿に積み上げながら影野をちらりと見ると、席に座ったまま動こうとしない。手の中にはウーロン茶のグラスがひとつ。
ようやく席について、いちごのタルトをひとくちでほお張る。くわねーの。いらない。くえよ。おまえがあまいのきらいなのは知ってるけどと松野は次はショートケーキを口におしこむ。カラフルなケーキが満載された皿を見てあからさまにいやそうにくちびるを曲げて、それでも松野があまりにもにらむので影野は立ち上がる。大皿ふたつに山ほど積まれた松野のケーキとは逆に、影野は小ぶりのまるい皿に、ヨーグルトと杏仁豆腐ふたつきり乗せて戻ってきた。うえに乗ったミントごとヨーグルトをまぜる手つきがひどくゆっくりで、それがまた松野をいら立たせる。なにおまえ、葉っぱもくうの。くうよ。悪趣味。あっという間に皿をからにして松野はまた立ち上がる。
な。これくってくんね。影野とおなじものプラスアルファを取ってきて、松野はそのうえのミントをスプーンの先でさす。いやだ。なんでよ。それは松野のだろ。いやならよけろよと言い残して影野は席を立つ。松野はスプーンでミントを全部よけた。アプリコットも、ひまわりの種も。全部。親のかたきのように取り去って、松野はその残りを悠々とたべる。戻ってきた影野にそれを押しやって、な、と松野はわらう。くって。影野はフォークを取り上げる。クリームやヨーグルトでよごれたそれらをまとめてすくい上げ、うすくひらいたくちびるに吸いこむのを、松野はだまってながめていた。おまえくやしい?別に。おれのくいかけ。きひひと松野はわらう。おれはわりとうれしい。悪趣味だなと影野は言う。にこりともせずに。そのながい髪のしたから、影野はきっとだけど松野を見ていない。じん。松野は声をあげる。ありがとう。
あまいにおいの立ち込める陳列台のそばに立って振り向いたとき、影野はほおづえをついて壁にかかったダリのレプリカをながめていた。なにがおもしろいのか松野にはわからない。その絵になにが描かれているのかも。ひとつだけわかることは、影野が松野の望むなにがしかをしてくれたことなんて、ないというそれだけだった。あーやなもんみちったと松野は視線をそらしてトングをにぎる。皿のはしで影野がつかったフォークがひかっていた。あれであいつの目玉を突き刺してくってやりたい。どんなにかにがくて、それはまずいことだろう。






燃えるキリンと宇宙象
松野と影野。
原型消えました。そしてなにもしなくてもちょっと病んだ雰囲気のふたり。
たなさんとの企画文でした。
PR
[121]  [120]  [119]  [118]  [117]  [115]  [114]  [112]  [110]  [109]  [105
カレンダー
09 2024/10 11
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
プロフィール
HN:
まづ
性別:
非公開
自己紹介:
無印雷門4番と一年生がすき。マイナー愛。

adolf_hitlar!hotmail.com

フリーエリア
アクセス解析

忍者ブログ [PR]