ヒヨル ズベン・エス・カマリの虫 忍者ブログ
女性向け11文章ブログ。無印初期メン多め。 はじめての方は「はじめまして」に目を通してください。
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だらりと公園のぶらんこに腰かけた宍戸のとなりで壁山がおなじように弛緩している。ぶらんこの幅が狭すぎやしないかと思いそのようなことを宍戸が口に出すと、それよりはやく帰った方がいいんじゃないかなと壁山はやわらかく言った。壁山の言葉はいつも正論で、たとえばそれは目金が無機質で無遠慮にぶつけてきたり、松野が痛みをえぐるみたいに投げかけてきたりするものではなく、やわらかでやさしくて、それがいっそ暴力的なのだ。限りなくなまにちかいふかい場所をそおっと引っかかれるみたいな、こまやかで曖昧な壁山の暴力。宍戸は壁山の正論を聞くたびに、そのいとおしいほどの暴力に埋もれてしんでしまいたいと思う。靴の中であおぐろく鬱血した爪の親指がぐんと反った。
住宅街のどまんなかにあるちいさな公園は、夜の底にひそやかに息をころしている。子どものてのひらとあしあとと嬌声を集めたケーキみたいな公園を、宍戸ははしから踏みつぶしてやりたくなる。生クリームの幸福にぬるくおおわれて、チョコプレートみたいな甘ったるい希望によりかかって、あしもとの暗いろうそくのそばに寝ころんで、それでは満足なんてできないのだった。もう。あー帰りたくねー。ほそい指を組んで、宍戸はそこに額を押しつける。わがまま言うなよ。壁山はそんな風に困ったふりで言いながら、そのくせしっかりと底に笑みをはりつけてある。ずるいよなぁと声に出さずに宍戸はわらう。なんでこんな簡単に飲み込めるんだろ。壁山はいつも気がついたらそれを通り抜けている。喉元過ぎればあつさもわすれる、だ。
壁山がぶらんこをきしませて立ち上がる。ケツいてーと宍戸も立ち上がった。帰るの。帰らね。どこ行くの。どこも行かないよ。サルエルデニムのポケットから携帯を取り出して、サーチライトみたいにぐりぐり回った。あしもとの地面がまるくよじれて、そのぼかっとした光の中を、壁山がなんどもなんども通りすぎる。壁山はわらいながら、目ぇまわるからやめなよ、と言う。止まったとたんにおっ、と足をふらつかせ、ぐらりとかしいだ宍戸の手首を壁山のてのひらがつかまえた。あーもう。ほら。うひひ、と宍戸はわらう。わーなんかおれ今ちょーあたまわりぃって感じ?感じ。壁山はうなづいて、手を離した。宍戸は地面にひっくり返る。夜の巨大な足にゆっくりと踏みつぶされて星座みたいにぺたんこになりたい、と思った。ケーキみたいな公園じゃなく、そのもう少しだけ現実的ななにかに。壁山と一緒に。
壁山って暴力的だよな。その言葉にええっと壁山は声をあげる。おれ、宍戸になんかした?宍戸は地面に寝ころんだまま両手をたかくつき上げた。てのひらで夜を押しのける。どうだ。壁山。きれいだろう。星がたくさんできらきらだ。壁山は宍戸のわきにしゃがんで、ねぇ、と不安そうに宍戸をのぞきこむ。宍戸はばねのように飛び起きて、両手で壁山をつきのけた。地面にしりもちをついて壁山は眉を歪ませる。そういうのが暴力的なんだばーっか。宍戸はひひっとわらった。なるべく絶望的に響くように。なま肉がからだの奥でだらだらに血をながし、壁山はもうとっくにそこを通りすぎてしまっていた。宍戸はケーキみたいな夜の公園に根をはって手を伸ばす。壁山は石のようにかたまってそれを見ている。ああもうやさしいなぁおまえは。やさしすぎて今すぐしんでしまいたいくらいだ。






ズベン・エス・カマリの虫
宍戸と壁山。
宍壁宍かもしれんと最近思い始めてきました。
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