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女性向け11文章ブログ。無印初期メン多め。 はじめての方は「はじめまして」に目を通してください。
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玄関の傘立てにはいつも、家族の人数プラス二本の傘が立っている。それぞれきちんと持ち主が決まっていて、普段はちゃんと自分の傘を持って出かけるのだが、急ぐときに限って間違える。ある雨の朝、マンションの入り口で傘をひらくと、ボンと音がして骨が折れた。以前父親がなにかに引っかけて、もう二本ばかり骨が歪んだり折れたりしているやつだ。微妙にいびつな傘はくろく、それでも健気に雨水をまるくはじいている。まあいいやとそのままあるき出す。使えればなんでも構わない。雨の通学路には傘がたくさん咲いている。カプセルの詰まったガチャガチャとか、バラ売りの色鉛筆とか、そういうものに似ている。なんだかその光景の華やかさに驚いてしまって、道のはじでぼんやり立ち尽くしていたら雨が止んでしまった。なので丁寧に傘を閉じてそのままごみ置き場に投げておいた。骨の折れた喪服の傘。もう二度と出会わないだろう。次はもっといい格好で生まれてくればいい。生きるのがへただった故人のご冥福をお祈りします。
出棺!






あまがさ葬
影野。
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授業中にメールが来た。休み時間に開くと三通来ていて、一通目は半田先輩から。タイトルは『☆お知らせ☆』内容は『やべータバコ騒ぎになった!(汗)学年集会とかありえねー(下向き矢印)(下向き矢印)つーわけでおれら部活遅れるから(笑顔)(キラキラ)』デコメがうねうね動いている。なにが笑顔だ。二通目はキャプテンからで、タイトルは『今日』内容は『二年全員部活遅れるから、アップして監督に伝えといて!』これは一斉送信で一年全員に送られている。まめなひとだ。三通目は染岡先輩からで、タイトルはなし。内容は『昨日ボール当ててクーラーボックス壊したから謝っといて』いやいや自分でやれよ。それ怒られんのおれじゃん。とりあえず三通目は音無に転送したらすぐに返信が来た。『ゆるさん』だからやったのおれじゃねーし。
そのメールたちを見たのは、もう五時間目も終わってあとは清掃してホームルームして部活行くだけ、ってときだった。えーとちょっと思って、そのあとに今日PSP忘れたなーと思った。少林寺は飼育委員だから、清掃場所は鶏小屋のあたりだ。おれは便所。男子便の個室ってあんま汚れてねぇなぁといつも思う。だから三人もいらないんじゃね、って思うけど楽だからわりといい。ゴム手袋はめて手洗い台の水垢をみかん石鹸で落としていたら、横から水ぶっかけられた。あーもーって言ったらふたりともモップとブラシ持ってびっくりしていた。なに?いや栗松さー。あーやっぱなんでもねーわ。わりー。えっなになに?おれなんかやった?思わず周りを見回しても特になんもなかった。上履きまでひたひたになってしまった左足だけものすごくつめたい。ふたりともそのあとなんもはなしかけてこなかった。もしかしておれマジ切れしたって思われた?そりゃちょっとイラッとはしたけどさー。
掃除道具入れにモップとブラシとホースとゴム手袋と便所たわしとすっぽんを適当に押し込んで、じゃばじゃば手を洗って外に出たら音無がいた。あーいたいた。なに?用事?クーラーボックス壊れたってゆってたからさー確認してきたの!掃除中になにやってんのおまえ。もうさぁばっくりだよ、ばっくり!ってわけで用事じゃないんだけどちょーむかついたの!先輩に言えば。絶対逆ギレされるからやだ。正直言えてる。しかもきれいな方壊れてたしーもう最悪!必殺技禁止!音無はぷりぷり怒りながら行ってしまった。どうせ経費で落ちるって言うか、夏未さんに言ったら解決するような気がする。教室に戻る途中、音無は壁山をつかまえて文句たれてた。あーあーもー。チャイム鳴るよって言ってやったら、じゃまたあとでねって音無は教室に帰ってしまった。あれまだ文句言い足りないの?そうなの?壁山はやれやれみたいな顔して、おれを見てちょっとわらった。気持ちはよくわかる。
ホームルームが終わったら、いつも少林寺と一緒に教室を出る。だいたい階段のあたりで壁山と合流して、げた箱ぐらいで宍戸と音無と合流する。ふたりは教室がおれらより一階したにある。しゃべり続ける音無の横で、宍戸がめちゃくちゃうんざりした顔でスニーカーを履いていたので、まだあの話題継続してんの?って聞いたら、今度は別の文句だった。もーいーじゃんって壁山が言うと、それとこれとは違うって力説された。声がでかい。少林寺だけがよくわからんみたいな顔で、おれらのやり取りを黙って見ている。つまんね?って言ってみたらやー別にーとか言って、言葉どおりちょっとおもしろがってる感じだったからこいつまじすげぇと思った。少林寺は変わってる。なんか物事の着眼点みたいなのが、おれらと九十度ぐらいは違うんじゃないかなってたまに思う。でももう飽きたーって少林寺がすたすた歩いていって、そういうとこも変わってる。素でそんなことをするからおれは微妙にどきどきしてしまう。全然やさしくないからびびってしまうし、なんでも正直に言うからそれはそれでちびっと怖い。
部室で着替えてアップをしたらもうすることがなくなった。音無が洗濯機をめっちゃ回していたから、なんか手伝おうかって聞いてみたらタオルを山ほどたたまされた。いいにおいのする柔軟剤で洗ったーとか言ってるけど、使い込みすぎて生地ががびがびになっている。あんまりにもひどいやつは、木野さんがたったーっと雑巾にしてくれる。壊れたクーラーボックスを台にして、タオルをじゃんじゃんたたみながら音無の文句とか世間話とかを聞いていると、これはわりとおもしろい。視界の横っちょのほうでは宍戸がひまそうにでもものすごくはやく親指を動かしてモンハンをしていて、壁山と少林寺はやっぱりひまそうにちょうくだらないネガティブしりとりをしていた。ねーねーどっちが五秒止めれるかやろうよ。音無がタオルを片付けてストップウォッチを出してくる。もうこんくらいしかすることないし。アキレス腱ももうのびのびだし。監督もまだこないし。はやく先輩っちくればいいのに。






ほうかごのはなし
一年生。
つづきに感想。
音無。おとなし。おーとなーしさーん。なに。そんな足立てるとぱんつ見えるよ。見えないよ。うわちょめくるなって。短パンぐらいはくでしょ普通。びびったートラウマ残るとこだった。ねーそのゲームおもしろいの。んー。っていうかトラウマってなによ意味わかんないんだけど。いやいや言葉どおりの意味だし。残らないでしょーあたしのなんだから。その自信がもう意味わかんね。それひとくちちょーだい。いーよ。ねーこれまずくない?普通だろ。あたし梅味あんますきじゃないんだよね。たべなきゃいいはなしじゃん。つかくさくね?なにこのにおい。リムーバ。はぁぁ?ペディキュアなおしてんの。ペディキュアとか家でやるもんだろ。だって今ひまだし。そんなもんさわった手でものくうなよ。ねーみてみてこの色ちょーかわいいでしょ。はいはい。みーてーよーもーばか。くえないものに興味ないんだごめん。てか靴下そんなとこにほっとくなよ。音無ちょっと揺らさないでおれ今クエストしてるから、ってあああちょっちょっちょっやめてやめてほんとやめて音無ごめんごめんごめんあああああ、あー、あーーーーイヤーーーー。あ。おわた。しんだ。しんだね。えっしんだの?もーせっかく弱ってたのにーなにしてくれてんだよやかまし。このばか。あーばかって言ったー。ばかって言った方がばかなんですー。音無さっきばかって言ってたじゃん。うるさい。あああああもう気力なえたわ。あとで先輩と行こ。ねーねーそれ目金先輩もやってるやつだよね。そーだけど。あたしもやりたいんだけどどこで売ってる?えー音無できる?難しいしやめとけば?難しいの?そんなに?そんなに。今おれクエスト失敗してたじゃんおまえのせいだけど。がんばればあたしもできるんじゃない?がんばればって。いっかいやらしてあげたら。やらしてやらして。えーでもおれだいぶいい装備してるけど。さいしょっからとかできるだろ。音無データ上書きしそうでこえーよ。しないしない。いやいや今までゲームしたことないだろ。じゃあ上書きしてもいい感じにしといて。できねーよ。とりあえず最初の方のやつみしてあげれば。うわあああこんなに血ぃ出るの?ムリムリムリムリあたしグロいのだめ。やっぱやめるーあーでも先輩とゲームしたいー。どうすんの。だいたい全部こんな感じだけど。げー悪趣味。うーでもやる。先輩とゲームする。ちょっと貸して。ほんと適当にいじんなよアイテムとか。あああ勝手に捨てんなし。えっこれどうやって動かすの。教えて教えてはやく。ちょっ勝手にあーもー。ねえねえこれこのあかいやつでいいの。ダメダメダメまだはえーよ。じゃあどれよ。音無ペディキュアもういいの。いい!じゃ片づけて靴下はきなよ。あとで!






アメノウズメは誘惑を捨てた
栗松と壁山と音無。
シチュはみなさんのご想像におまかせ。
ちなみにモンハンは据え置きGのクック先生で挫折しました。
宍戸の指が伸びて、びーと少林寺のみじかいまつ毛を引っぱった。うつらうつらとしていた少林寺は、それで一気に覚醒する。なに、きもいんだけど。周りからはいくつものひそやかな寝息がたちのぼる、深い夜の底、眠りの時間。ねむれねー。あゆむ、かまって。ねろ早く。少林寺は目をとじて宍戸に背を向けるが、痩せたてのひらが髪の毛をかきわけて背中を這う。あゆむ。ねーあゆむ。つかほんとうざいんですけど。寝間着のすそからそれが侵入してきそうだったので、とりあえず思いきり寝返りを打ってその手をつぶしてやった。あいて。宍戸が手を引く。少林寺は用意された布団にすっぽりくるまって、眉をしかめてささやく。みんなねてんだから早くねろし。だからねれねっつってんじゃん。おれ環境変わるとねれないのまじで。しらねーよおれ眠いんだけど。じゃー一緒にねよ。おれの布団おいで。やだよ絶対なんかするだろ。宍戸は笑顔で手を広げている。不気味だ。少林寺はハムみたいな格好のまま転がって、逆隣の栗松の布団の方に避難した。栗松の掛け布団はつつましくまるくふくらんで、規則正しいおだやかな寝息が聞こえる。
栗松のそばにぴったりと少林寺がくっつくと、宍戸がのっそりと自分の布団から這い出して、少林寺の布団を占拠してしまった。あーちょ。狭いスペースにす巻き状態ではさまれ、少林寺は宍戸を蹴る。かえれって。やーだ。あゆむが一緒にねてくれるまで帰らねーしねれねー。てめーモジャモジャ大概にしろよ。宍戸はくるくるっと少林寺の布団をはぎ取ってしまい、それを三人(栗松含む)の上からかぶせた。あゆむちょーいいにおいすんだけど。くえるの。くえるわけねーだろ。逃げ場を封じて宍戸がもうありとあらゆる場所をさわってくるので、少林寺は思いっきり股間を蹴りつけた、ら、寸前に膝でガードされた。うわうぜえ。いやいやまじしゃれにならねぇいたかったんすけど。ちんこ潰す気かよ。だまれモジャ。宍戸が反論しかけた言葉を切った。少林寺の背中で栗松が身じろぎする。んーとひくくうめき、またちいさな寝息を立てはじめるのを、ふたりは息を詰めて待った。あゆむが騒ぐと栗松起きちゃう。誰のせいだよ誰の。
つーかほんとねろ、と、少林寺は思いきり宍戸のひたいを突っ放した。そのすきに立ち上がると、元の宍戸の布団にすべり込み、その隣の壁山のそばに避難した。低反発枕も一緒に。壁山の寝返りに巻き込まれたら大惨事なので、ある程度の距離は保ってある。おやすみ、と一方的に宣言して、少林寺は低反発枕にあたまを預けた。もぐった布団がひやりとする。あゆむ。宍戸が呼ぶ。おれさーまじでおまえとひっついてねたいんだけど。あゆむ。少林寺は目をあけない。まぶたをあけるとたぶんもうずるずると言うとおりにしてしまうのは目に見えていた。宍戸はそういうとこがすこしこわい。あゆむ。あゆむ。呼びかけばかり耳に届くが、宍戸がそばに寄ってくる気配はない。はやくねなくては。明日も練習がある。少林寺はひたすら目をとじる。あゆむ。宍戸の声は延々と続いた。おれおまえのことすきなんだけど。あゆむ。
枕から宍戸のにおいがする。ねられない。








でも次の日の朝はなんでもない顔をするんだからやめとけばいいのに
宍戸と少林寺。
例によって矢印でも掛け算でもないふたり。
合宿です。正確な並びなんかしらん。
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