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女性向け11文章ブログ。無印初期メン多め。 はじめての方は「はじめまして」に目を通してください。
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オレンジとグレープフルーツはどちらがすきかとたずねたら、ピンクグレープフルーツならそちらの方がすきだと言う。
半分に切ってぎざぎざのスプーンでほじくるのかばかばかしいと思っていたら、皮をむいてうす皮もむいてかぶりつく、みたいなことも言う。
ものすごく遠くのほうでしずみかけた夕陽がこれまたものすごくあかくて、円堂なんかあの鉄塔で思いでにひたっているにちがいないと思ったので言ってみたら、すこしわらう。その髪のいろが夕陽をすいこんだみたいにあかくて、ため息をつかずにはいられない。まっかにそまった河川敷はもえるようだ。
首輪をされたいぬみたいに、俺はここから離れられないのかもしれないと思った。俺がではない。首輪をされたいぬはあいつだ。ひざをかかえて、そこにあごをのせて、だけどどこを見ているかは、わからない。
俺がひっぱりまわすものだから、俺のちかくにいてくれたけど、もうそれもかなわないのだな、と思ったら、かなしさとかさびしさより別のものがのどのあたりにこみ上げる。
どうかあいつの行くあたまのいい高校の校則がゆるいものでありますように。このながいながい髪をきりおとすようなことを、あいつがしなくていい高校でありますように。俺が行く高校はあんまりあたまのいいとこじゃないから、あいつがこれからどんな生活をするのかなんて、想像することすらできない。
と思っていたらあいつがほそい指をのばして、あかいひかりをさえぎるような格好をする。そのうえから手をかざしてやった。まぶしすぎて目がいたい。
さいごの日だからすこしだけやさしくしてやりたかった。もうさいごの日だから。染岡、とあいつがしずかに俺をよぶので、首すじのあたりにやわらかくおちかかる髪を、ちょっとらんぼうに背中にはらってやった。
むきだしのしろいそこに手をのばした。つめたかった。首輪がはずれるおとがした。染岡。夕陽があかあかとすべてをもやしていく中で、あいつがそっと、俺をみた。
かばんに入れたままのオレンジジュースのペットボトルは、水をかぶったみたいにひたひたになっていた。色紙の文字はにじんでいなかったので、でもそれでよかったのだと思う。あげられるものなんて最初からなにもなくて、つたわることもなくて、だからなくことだってできなかったのだから。
あいつの背中が地面にこすれた。両手でおさえたのどがかるくひくついて、そうしたらもうあたまの中で砂時計がひっくりかえったみたいにいろんなものがあふれて、俺はあいつのうえにふとんみたいにたおれた。目のはしで夕陽があかかった。まぶしすぎて目がいたかった。
さいごの日にはきみのとなりにいたかった。惜しむことなどなにひとつない。きみが首輪をされたいぬみたいに俺のそばにいてくれたことを、俺はなん十回だってなん百回だっておもいだすだろうし、きみはピンクグレープフルーツをたべるのとおなじくらいには、俺のことをおもいだしてくれればかまわない。
さいごの日にはせめて、きみのとなりでなきたかった。つたわることもなかったから、おもいだすことだってもうできない。ああくれていく、くれていく。さよなら。さよなら。さよなら。きみとそのすべて。





さいごの日きみのとなりで
染岡と影野。
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悪魔は三体まで連れ歩く(二体は戦闘、一体は一緒に歩く)ということで。
前から、戦闘、戦闘、連れ歩き、です。


円堂→シヴァ、パールヴァティ、ジャックフロスト
主人公でキーパーということで、手堅い守りを。物理吸収のシヴァと、その嫁さんで回復兼魔法攻撃役のパールヴァティ。
全体物理攻撃の震天大雷に加えて、攻撃魔法もジオダインがあるので火力も十分。使う技なんかは全体的に雷門ぽい感じで。
連れ歩きのジャックフロストくんは円堂のおともだち。ヒロ右衛門でいろんなアイテムを拾ってくれるホー。
(ゲームの顔、というイメージです。シリーズではおなじみのシヴァには妻のパールヴァティがいてほしいなと思いましたし、ヒーホー君はアトラスの顔ですしね)

風丸→カマエル、クー・フーリン、リャナンシー
切れ者風丸はカマエルには必ず会えるでしょうし、打撃力もありカリスマの話術を持つクー・フーリンも外せない笑
疾風族を入れて、さらに容姿がうつくしい、という観点で選びました。攻守ともにこなせるよい仲魔です。DFですが、やはり攻撃のイメージがあったので。
リャナンシーはこれも見た目からのイメージで。あの物憂げな感じがよいです。どちらも冷静なキャラなので、すごくよいコンビになりそうな感じがします。
(最初はクー・フーリンの代わりにティターニアを入れていたんですが、メディアラマ持ちがかぶったのでチェンジしました。しかしどっちにしろ美形で選んでます)

豪炎寺→アスラおう、アマツミカボシ、ヨシツネ
ばりばりの武道派と見せかけて、しっかりサポートもできます、というイメージ。火力は文句なしのトップクラス。
これも紅蓮、技芸と豪炎寺っぽく。若干氷結攻撃には弱いですが、テトラカーンを使えば無敵の豪炎寺無双が可能です。
ヨシツネはこれも容姿から。豪炎寺の後ろでヨシツネがにらみを効かせてたら、かなり威圧感があると思います。
(できる子豪炎寺、という観点から集めたので、火力重視のかなりしっくり来るメンバーです。でもアマツミカボシが若干やさしすぎるかな、とは思います)

染岡→マハカーラ、ナーガラジャ、サティ
こちらは攻撃一点張り。防御面に不安を残しつつも、攻撃力なら文句なしです。精神攻撃に弱いというのが染岡っぽい笑
どうしてもナーガラジャ(というか若人口調)を入れたかったのです。全体的に大きいけれどスマートな仲魔で揃えました。
サティはおばちゃん口調のため。後ろからごちゃごちゃ世話を焼かれて、ああああー!ってなってる染岡が見たいのです。
(この上ない人選ができたと思います。まじで。デビルサマナー染岡リュウゴとしてデビューしても、遜色ないメンバーだと思います笑)

半田→クダン、クラマテング、ネコマタ
全体的に地味っぽく中途半端。というか、玄人好みな感じで。しかしマハムドオン持ちで運が最高のクダンが、ある意味一点豪華。
MFにしてはやや火力不足ですが、粘り強く戦闘が続けられ、かつ足が速くアクション能力の高い悪魔で揃えてみました。
ネコマタは趣味。半田にすりすりしてればいいと思います。ありんす口調がいいなと思いまして、それなら手触りのよいネコマタで、と笑
(半田は結構悩みました。最初はクダンの代わりにトウテツを入れてましたが、宍戸に譲っていただくことにしました。でもクダンが案外しっくりきてよかったです)

マックス→スカアハ、ジークフリード、アガシオン
技芸かつ後方援護のスカアハに、弱点の少ないジークフリードで攻守のバランス重視。マックスは器用な子なので。
こちらは育て方によればおそろしく強くなるメンツ。しかしジークフリードはともかく、スカアハ師匠は気まぐれそうですよね。美人ですし笑
アガシオンはハピルマトーク持ちを。と言いますかまぁ、見た目です。似てるよね、マックスに。すごく仲良くやっりそうです。
(もっとケモノケモノした見た目の悪魔を入れてもよかったような気がしますが、それだと魔法か物理かに偏りそうな感じがしたので、人間ぽい悪魔にしました)

影野→ブラックライダー、チェルノボグ、ジュボッコ
暗く不気味で、かつ表情のない(ガイコツ系)で揃えました。DFだけにHPが高くて頑丈かつ呪殺の効かない悪魔です。火力もそこそこ。
ほぼビジュアルで決めたのですが、意外とバランスの取れた性能でした。攻撃も魔法もいけます。そしてやっぱり不気味笑
ジュボッコも不気味で顔がないので。影野と翁口調は絶妙な組み合わせだと思います。じいちゃんの老獪さと茶目っ気にアワアワしてるといい。
(惜しむらくは外法属性を入れたかったんですが、手ごろな悪魔がおらず。ヨミクグツ・丙なんかも考えました。アビナガスネ兄弟とかスサノオでも、ビジュアル的にはいけたかもしれません。髪型的な意味で)

目金→ナンディ、モコイ、トート
全体的に愛嬌があって、あんまり大きくなく、かつ口調がガイン氏もしくは異邦人、という観点で選びました。モコイは外せなかった。
攻撃というより、むしろ愛玩の意味合いのが大きい。ナンディとか特に目金っぽいです。無効化スキルも多いけど、弱点も多い笑
トートと目金は仲良くやりそうです。トートと並んで本を読んでる目金とか、ガイン氏口調で目金とおはなしするトートとか、とにかくかわいい。
(目金はベンチが基本なので、戦闘というよりもひたすら目金のキャラに似合いそうな悪魔を探しました。トートはほんと最適だと思います)

土門→フツヌシ、ペクヨン、モー・ショボー
いかついけれど性格は友愛、という悪魔ばかりです。クールで、でもやさしい土門と仲良くやれそうな感じの悪魔を選びました。
雄叫び持ちのペクヨンがいるので、攻撃面では問題なしです。レベルの割に耐も高いので、頭を失っても全く問題なく動けます笑
モー・ショボーは、おきゃん口調悪魔を、と思いまして。土門はピクシーとかショボたんとか、あの辺とキャッキャやれそうなイメージがあります。
(ペクヨンとネビロスで悩んだのですが、ネビロスの耐が若干低かったのと、友愛でなかったのでペクヨンに。容姿ならネビロスのほうが土門には似てると思います)

壁山→オオヤマツミ、オオミツヌ、ショウテン
とにかく岩っぽく壁っぽくでっかく。攻撃よりも守りに特化した、耐の高い悪魔を揃えました。イメージはザ・ウォール。
見た目が岩っぽく打たれ強いオオヤマツミとオオミツヌのコンビは、間違いなく壁山専用になるかと思います。みんなの壁になれるメンツ。
ショウテンはもう完全に見た目で。壁山とショウテンが並んでたら、豪炎寺&ヨシツネコンビとは違う威圧感がすごいと思います笑
(ショウテンが偉人口調なので残念です。これがマッドか異邦人だったら、威圧感もありつつだいぶかわいらしいコンビになったと思います)

少林寺→フェンリル、ドゥン、オバリヨン
すばやい身のこなしが少林寺の身上、ということで、四足で移動速度が速い悪魔を。攻撃もさることながら、とにかく最速です。
フェンリルの物理攻撃無効で、相手の攻撃をくらわずに足で攪乱・翻弄する戦法。ドゥンは少林寺という名前からの連想。
オバリヨンはこれしかない!と思います。ふたり並ぶとそっくりでにこにこしちゃいそうです。手をつないで歩いてほしいです笑
(ドゥンとヴリトラを最後まで迷ったのですが、やはり移動速度が速い方を取りました。ヴリトラのドラゴンな見た目も、イメージとしてはすごくらしいと思ったのですが)

栗松→マダ、ラクシャーサ、ガシャドクロ
ひとくせもふたくせもある悪魔。とにかくにぎやかに派手に攻撃し、かつ口調がマッドと異邦人という観点で選びました。
栗松はDFの割に攻撃にも使えるというイメージなので、攻撃力が高めで。そしてマダの物理無効で守りの面でも心配なしです。
ガシャドクロはこちらもおばちゃん口調で。栗松は意外と上手に世話を焼かれるタイプかもしれません。おばちゃん口調と相性がよさそう笑
(ラクシャーサとキュベレで悩みました。なんか栗松はキュベレとかアルラウネとか、あそこらへんの美女悪魔にすごく好かれそうなイメージがあります)

宍戸→トウテツ、ムスッペル、イッポンダタラ
ライドウがトウテツを肩車した瞬間、これを宍戸にやらせたらどんだけかわいいだろうと思いました。それ一択です。まじで。
全体的に魔法攻撃主体という感じです。宍戸は小器用なイメージですので、ガツガツ物理攻撃でいくよりも似合ってていいかな、と。
イッポンダタラはマッド口調がよいなぁと思ったのです。うぉれを見るなぁぁぁぁ→見てないよ、といういいコンボが成立しそうなもので。
(ムスッペルとオオクニヌシで悩んだのですが、やはり紅蓮属性がひとりはいてほしいなと思ったのでムスッペルで。翁口調ムスッペルは宍戸をえらくかわいがってくれそう)



ああ。楽しかった。こういうの考えるのがすきなので、たまらん楽しかったです。
18話感想。
弁当箱をぶらさげて、染岡は教室の後ろの扉をがらりと引いた。窓際のいちばん後ろの席。影野がやはり弁当箱を机の上に出しながら、ふと気がついたように染岡を見る。
ケガどうだ。大丈夫か。空席の椅子を引っぱってきて、染岡は影野の机にすわる。ありがとうと言う影野の頬にはおおきな湿布が貼られていたし、顔色もやたらわるかったので、あえて大丈夫とは言わないその返事はひどくいたいたしかった。
なんで松野あんなにキレたんだよ。はしを持って弁当箱のふたを開けながら染岡がたずねた。影野が驚いたように言う。知ってたと思った。なのでわかんねーよと言ってやる。染岡はそういう感情の機微には、面倒なのでうといふりをしている。
影野は言葉少なに、おおよそ染岡が想像していたとおりのことをしゃべった。声が少しくぐもっている。染岡は遠慮なく弁当をかき込むが、影野のはしの先は、きれいに巻かれた卵焼きをくるくるとほどいているだけだ。
そんでなんでお前はそー手加減みたいなことすんだよ。それでも結局責めるような小言のような、そんな妙な具合になってしまう。そりゃ松野だって怒るだろ、プライドとかあんだからよ。言いながら染岡はから揚げを口につっ込む。影野は一向に食べようとしない。
うん。なんだか照れたようなはにかんだような、そういう風に影野がいいよどむ。めんどくせーななんだよ、言ってみろよ。せめてもう少しやさしく言えたら、と、思わないでもない。
松野が。影野がゆっくりと口を開いて言う。松野がケガすると思ったんだ。
はぁ?染岡は思わず目を見開いた。お前、サッカーなんだからケガなんかつき物だろ。いまさら何なんだという意味を込めてそう言っても、影野はなにも言わない。ただうなづくばかりの前髪に隠れたその目が、おそらくは昨日のあの瞬間を見ている。
それにお前、言いかけて染岡は言葉につまる。理由がどうあれ結果がどうあれ、昨日松野はケガをしなかったし、その松野が手を出したせいで、影野はしなくてもいいケガをした。
松野、ものすごく怒ってた。結局影野ははしを置いてしまい、両手で顔を覆うようにした。その仕草があまりにも絶望的だったので、染岡はかけてやろうとした言葉を飲み込んだ。影野がなにをかなしんでいるのかわからなかった。あのとき影野がしたことが、最良だったとは言えないにしても。
どうしたんだよ。染岡が影野の肩にそっと触れて言う。やわらかな髪の毛が落ちてくる。俺あのときなきもしなかったとちいさな声で影野が言った。顔を覆う手のすき間から見える湿布が、やけに目にこびりつく。
なんでだろう。俺あのとき全然かなしくもなんともなかった。
染岡は言葉をなくした。あのときの光景が何度もよみがえる。あおざめた顔をした影野は、松野を通りこしてずっと遠くを見ていた。松野も半田も大声でわめいて、暴れて、泣きじゃくって、それはいたいほど空気をうねらせていたのに。
影野?染岡は呼びかけた。影野はゆっくりと顔を上げて、誰もいない空間にちいさく笑った。なにがこわかったのかもう俺はわからない。そう言いながらほそい指で湿布に触れて、でも松野が怒ってたんだと影野はちいさな声でつぶやく。
お前なきたかったのか?影野はちょっと悩むような仕草を見せたが、それでもなにも言わなかった。はしを手に取って、ああ食欲がないと困ったように言った。問いかけてから染岡は気づいた。なきたかったのはたぶん自分だ。
そう思った瞬間にあのときにっと染岡にわらいかけた半田の気持ちがわかったような気がして、染岡は弁当の残りをいそいで口に押し込んだ。なくものかなくものかと言い聞かせ、影野のあおざめた横顔をながめた。
それでもやっぱお前もわりーよ。影野はその言葉を聞いて、またちょっとわらった。俺もそう思う。落ちかかる髪の毛を肩にかけるようにしてやると、首のほうまで腫れていることに気づいた。俺がわるかったんだ。影野がしゃべるたびに引き攣れるように動くそこに無性に触れたくなって、それでもなにもできずに染岡は手を放す。
本当はあのとき、半田よりも先に松野を殴ってやりたかった。だけどそれさえも今となってはその理由がわからない。松野をそんなに大事にしているくせに、影野が松野を通して見ていたものが、とてつもなくおそろしいと思った。あの日飛び出した夕焼けの色が、今でもまぶたの奥ににじんで動かないのに。そうしてもっとお前にやさしくできたらと、今この瞬間だって思っているのに。
そういえばケガは大丈夫かと逆に問われたとたんに、松野にしつこいほど蹴りつけられたスパイクの傷がひどくいたんでまたなきたくなった。答えることはせずに、影野、とあきれるほど何度も呼びかけた。言葉が返るたびに影野は染岡を通りすぎていくし、あの夕暮れは動くこともしない。





夕なずむ
染岡と影野。もやもやするふたり。
謝る気があるのかと言われたらないと答えるだろう。
結局松野はあの大暴れの日から学校を三日休み、半田も一日だけ学校を休んだ。
あまりにも後味わるく出てきてしまったものだから影野にメールをした。そっけない文章には、そっけない内容で返ってきた。怪我はむしろ、松野にボコボコに蹴られた染岡や宍戸のほうがひどかったらしい。母親同伴で謝りに来た松野はそれでも、影野のした同情とも手加減ともとれるささいなプレイを、許しはしなかったという。
影野自身はどうしたのかと聞くと、特に変わりなく学校に行ったらしい。ああーと半田は思い至る。そういえば怪我の程度をたずねてくれるような友人は、影野にはいない。
半田もまた母親にひどく叱られて(監督から連絡が来たらしい)、松野の家に謝りに行った。母親同士はなんだかんだとしゃべっていたが、半田は最初にごめんと言って頭を下げたきり、ひとことも口をきかなかった。松野は冷却材をタオルにつつんだものを頬やら目やらに当てていた。それなのになきはらしたその顔が奇妙に大人びて見えて、不思議だった。
布団を頭からかぶって昼のバラエティ番組を見ていると、すさまじく現実味がなくなっておかしな感じがした。耳の中がやけにいたいような気がしたし、昨日いらいらのままにごみ箱につっ込んだユニフォームもスパイクも、そのままだったのに。
自分が本当に謝らなければならないのは松野なんかではないと半田は思う。自分のしたことの善悪くらいはわかるし、それを考えたら確実にあのとき自分が「悪」かったのだろうと思うけれど。でも。食欲がこれっぱかしもわかないので食事にも手をつけずにいると、携帯が三秒間鳴った。送信者の名前を見て、半田は開封もせずにそれを削除する。
認められないから子どもだなんて昨日父親から言われたけれど、そんなことしないと大人になれないならば、いつまでもがきのまんまでいいと半田は答えた。父親はわらって、でもなにも言わなかった。あのときは自分も悪かったろうけれど、あの程度のことで影野を殴る松野が、そのときは無性に腹立たしかった。
あのとき染岡がついたため息の理由がわからない。父親はなにも言わなかったけれど、晩ごはんのときに自分のおかずを次々に半田の皿にのせた。次々に。言葉に困ってしまうほど。
今日は部屋から一歩も出ていないし、カーテンも開けていないから天気がわからない。今ごろはみんな昼めしを食い終わっただろうか。何ごともなかったような顔で、昨日こんなことがあってさなんて、話しているのだろうか。
わかってくれると思っていたのに、それがないから怒るなんてばかばかしい。半田は頭から布団にもぐりこむ。どんどんどんどんばかみたいに涙がでで、しかもそれが止められないからどうしていいかわからない。松野みたいに怒って暴れればよかったのだろうか。そうしたらそれで伝わっただろうか。染岡はなんというだろうか。またため息をついて、かわいそうみたいな目で見るのだろうか。
ユニフォームとスパイクは母親が持っていってしまった。明日にはぱりっと乾いていることだろう。食事は手をつけられないままどんどん冷えていった。昨日父親がくれたおかずみたいに。テレビから聞こえるバラエティの声がうっとうしいし、カーテンを開けていないから天気もわからない。ひとりをひとりで噛みしめながら、それでもさびしいと半田はなく。





絶望はそらいろか
半田。思春期特有のいらいらが消えない。
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無印雷門4番と一年生がすき。マイナー愛。

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