ヒヨル 忍者ブログ
女性向け11文章ブログ。無印初期メン多め。 はじめての方は「はじめまして」に目を通してください。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

そういえばわるかったな、とペットボトルのでこぼこの口をかみながら染岡は言う。え。ちょうど扉を引いて部室に足を踏み入れようとした影野は、その言葉にあからさまにかたまる。なんのはなし。石化からやんわりと脱出し、後ろ手で扉をしめて影野はロッカーの前に鞄をどさりと置いた。逆にたずねるゆるやかな口調に、染岡の首筋がいやな感じにつっぱる。かなり前。帝国戦が終わって、すぐくらい。染岡はミュージックプレイヤーの画面をぷつりと落とした。エルレガーデンがひゅんと遠ざかり、しゃべった拍子にはねたスポーツドリンクの飛沫が液晶をぽつんとよごす。おれ、お前のユニフォーム掴んで、転ばせたことあっただろ。ああ。脱いだ学ランをていねいにたたんでロッカーに入れながら、影野はなんでもないように言った。そんなこと忘れてた。
染岡は眉間にしわを寄せる。座った椅子の座面はかたくざらついて、座り心地はお世辞にもいいとは言えない。あのときは最悪だった。携帯をばちんと閉じて、腕をぐうっと染岡は伸ばす。影野を地面に引きずり倒したあのあと、染岡は松野に思うさま蹴られたのだった。悩むならてめーだけで悩んでろはげ野郎、と、あのとき松野はひどく怒っていた。容赦のないその激昂に、まるでもめ事に興味のない半田がいい加減にしろよと止めたほどだった。あれからもう時間は経ちすぎるほど経っている。影野はここしばらくグラウンドには立っていないし、半田もまたポジション争いにのみ込まれた。松野はすずしい顔で染岡にパスを寄越すし、それをまた染岡はなんとも思わない。サッカー部は刻々と変わっていくのに、あの日のにがすぎる記憶だけは、染岡の中で変わってくれないのだった。
影野が染岡をそっと見た。なにか言ってほしいのか。別にいーよ、謝りたかっただけだし。投げやりな影野の言葉に、染岡もおざなりにわらう。謝らなくてもいいのに。影野がユニフォームの中からながい髪の毛をひっぱり出した。ばさりとひろがったやわらかな髪が、彼の痩せた背中をおおってしまう。あのときの染岡にはなにも見えていなかった。掴んで引きずり倒して、松野にボコボコにされてから後悔した。染岡の中であの瞬間は終わらない。影野のながい髪と痩せた背中に手を伸ばす、あの瞬間は永遠に終わらない。ああ、ああ、なんという。照れ隠しにミュージックプレイヤーを再起動した。液晶を指でこすると水滴がすーっと伸びてこびりつく。エルレガーデンがアイクッドミシットマイフレンズと歌っていた。そのそばには影野がいる。ああ、ああ、なんという。松野の怒りが、今なら染岡にはわかるのだった。記憶の中の影野に、伸ばされ続ける幻肢の指は。ああ、ああ、なんというこの衝動よ。なんというこのかなしみよ。






ファントリム
染岡と影野。
幻肢現象というものには、言葉にならないなにかを感じずにはいられません。
PR
0.3ミリのシャーペンの芯がぽきんとかるい手ごたえで折れた。目金はペンを持った手をかるく振る。ペン先からみじかい炭素のかけらがぽろりと落ちて、ふかい憂鬱なため息をついた。左手でペンケースの中を探ったが、芯がはいったケースは間がわるいことに空っぽでそれがまたため息をふかくする。すいません。部誌をペンをはさんでぱたりと閉じ、目金は上半身をひねって呼びかけた。おおきな声を出すと、松野にやられた怪我がまだいたむ。投げ飛ばされてぶち当たったロッカーは、扉をわずかにゆがませていた。からだはどこもかしこもいたい。翌日はあまりのいたみに立ち上がれなかった。
確かさっきまではそこに少林寺がいたはずだと目金は椅子から立ち上がる。はあいと返事をしたのは、予想に反して音無だった。あ、いえ。ロッカーのかげから顔を覗かせて、先輩どうしたんですかと問いかけるその手には、たたんだタオルがたくさん抱えられている。目金は視線をそらした。少林寺くんは。あーさっき購買までお使い頼んじゃったんですよ。音無は眉をきゅっとさげる。なにか用ですか?あたしで足りるなら。いえ、いいんです。部誌のあいだからペンを抜こうとして、それがコンクリの床に落ちた。あ。それを拾い上げようとして、目金は眉をしかめる。わき腹がおもくきしんで、からだが曲げられない。先輩。タオルを置いた音無がしろい指でそれを拾い上げた。それを目金の手に戻した、ふたりのひふがわずかにこすれあう。先輩。音無が目金の顔をのぞきこんだ。目金の息が、のどの奥の方でつめたくかたまってしまう。ひざがきしんで、動けなかった。すべての音が、とおくとおくとおくへ消えていく。ペンを拾ったそのほそい指が、あおく鬱血した傷に触れようとして。そして。
音無ー。おとなしーぃ。外から聞こえた声に、はーいと返事をして音無はからだをひるがえした。部室の扉を閉めもせずに音無はあわただしく出ていってしまい、入れかわりに少林寺が戻ってきた。君ですか。目金はがたんと椅子にくずれ落ちる。血液があっという間にからだをめぐる。動揺は、今になってやってきた。あいつおれのこと便利に使いすぎです。首のうしろをかるくこすり、少林寺はユニフォームのズボンのポケットからなにかを取り出して、目金に差し出した。先輩なにされたんですか。目金がそれを受け取ってから、コンクリの床に少林寺はぺたんとすわる。松野さん部活こないし。先輩はボコボコだし。その言葉に目金はすこしわらった。わらうと顔がいたい。派手にあちこちぶつけたし、その前にあんなに力いっぱいなぐられたなら当然だ。目金は手早く受け取った芯をつめて、部誌の続きにペンを落とす。音無、おどろいてましたね。あなた見てたんですか。すこし。少林寺はきききとわらった。おれがいてよかったでしょう。そうですね。書き終えた部誌を閉じて立ち上がるとからだがひどくいたんだ。少林寺が眉を寄せて、目金の隣にそっと寄り添う。先輩、まじなんですか。音無さんには言わないでくださいね。かるく足を引きずるように目金は部室を出ていった。そのひょろりとした背中はあきらかに憔悴していた。
音無。窓から少林寺は呼びかける。だいじょうぶ。だいじょうぶじゃない。涙のまじった声がした。おれもう行くけど。音無、どうする。音無はどこにも行こうとしなかった。ただ、しゃくり上げる声がかすかに聞こえてくる。少林寺はさっさと着がえてかばんを肩にかけた。ふたつ。たぶんもうあのひとは戻ってこないよ。あんた最低。音無のひくいその声に、少林寺はしろいほほをわらわせる。嫉妬すんなよ、音無。そう言うと部室がどん、と揺れた。壁にはきっと音無の足がたがくっきりとついていることだろう。嫉妬すんなよ。少林寺はもう一度言った。もういいかげんわかればいいのに。
(おれだってあのひとに嫉妬してるのに)






ぼくもういかなきゃなんない
目金と春奈と少林寺。
目金から少林寺に出てる矢印は、信頼とか安心とかそんなものです。
ヒャッコネタです。全員あえて女生徒で。
12人しかいないんで、そこんとこよろしくお願いします。

円堂→上下山虎子(かげやまとらこ)
やっぱりリーダーですしキャプテンですし。彼は面倒見いいですしね。
お兄ちゃんに振り回されて、お姉ちゃんに頭上がらないとか、すごい素敵すぎます。
行き当たりばったりな性格もぴったりかと。スズメと一緒に家出しちゃったりね。最高ですよね。

染岡→伊井塚龍姫(いいづかたつき)
ツッコミ役兼ややずれた常識人。高飛車で態度でかいのもよいです。
実は高所恐怖症なタッちゃんかわいいよタッちゃん。プール関連の話がすごくすきなのです。
何だかんだ言いながら、ツンデレなのがかわいいと思うんです。そして世話焼きさんなとこが染岡ですね。

栗松→早乙女雀(さおとめすずめ)
なに考えてるかよくわからない、つかみ所のないキャラなので。
いや栗松はキャラがしっかりしてるんですけど、スズメさんかわいいんだもん。ほんとかわいいんですよ。
虎子だいすきなとこもね。かわいいですよね。そしてアホ。さらにエロ。もひとつ大食い。かわいい。

半田→能乃村歩巳(ののむらあゆみ)
常識人ツッコミ役。あまりにも普通のひとなので特筆すべきことはないです。
すごいかわいくて巨乳なアユミさんですが、半田で言えばなんなんですかね。あれがでかいんですかね。
周りにいいだけ振り回されて、ヒィヒィ言ってる感じです。

風丸→杏藤子々(あんどうねね)
ズーレーもといバイ女。エロい理由で生徒会長とか狙ってるだめなひとです。
何故風丸かというとですね、虎子へのこだわりがひどいんですよ、ネネさんは。
風丸はナチュラルに性癖が歪んでる気がするのでぴったりです。ホースで水かけまくってください。

松野→幕之内潮(まくのうちうしお)
典型的ヤンキーな見た目と、典型的ヤンキーにありがちな面倒見のよさを持ち合わせる子。
猫をにこにこしながら抱き上げたりすればいいじゃないか。プリンだって食えばいいじゃないか。
ドッジボールでイノたんをかばった瞬間に確定しました。潮萌え。

宍戸→古囃独楽(こばやしこま)
糸目でしたたかで飄々としてお金大好き。これはもうぴったりすぎて大変です。
獅子丸→アユミ(誤解)に大爆笑してたシーンとか、だいすきです。かわいい。
ファッションが奇抜なのもかわいいですね。あと写真撮りまくるのも。宍戸も写真すきそうですしね。

目金→凉ヶ崎知恵(すずがざきちえ)
メガネでロボット。というかメガネでヲタクな時点で目金確定なわけなんですけども。
オークションの値上がりにがっかりしてたとこが激カワなんです。ほんとに。
あとメガネがないと明日も見えないとか。メカ虎子に誇らしげなとことか。かわいいです。

影野→蕾家祈(つぼみやいのり)
イノたんが影野でなくて、誰が影野であろうかって話です。モロに黒ベタの影野です。
スズメが真剣にイノたんを怖がってるんで涙目。公式で前髪上げたらかわいいってやばいです。かわいい。
友達イナイ歴15年とか、自覚しちゃってるんですよね。よかったねイノたん。虎子と仲良くなれて。

壁山→大場湊兎(おおばみなと)
でかいのに泣き虫で、見た目はすごく大人っぽいのに中身は誰よりも幼い。
ミナトはヒャッコでいちばんすきなんです。衝撃的なかわいさでした。壁山もミナトくらいかわいいよ。
手助けしてくれたひとには、全力でなついちゃうあたりが本気でかわいいです。

豪炎寺→風茉莉冬馬(かざまつりとうま)
周りに無関心な本の虫。虎子とは腐れ縁でかつよいライバル。アユミと仲良し。
最初は冬馬を目金にしようかなと思ってたんですが、豪炎寺が知恵は絶対ないなと思いまして、こちらに。
ツン全開だけど、ときどき素でやさしいあたりがたまらんです。かわいい。

少林寺→弐街道火継(にかいどうひつぎ)
飛び級で高校に編入してきた数学の天才。ロリでボクっ子でガチでかわいい。
ロリって時点でしょうりんたんなんですが、ヒツギたんおばあちゃん子なんですよ。しょうりんたんもおばあちゃん子っぽいなと思ったので。も、もえー。
虎子スズメヒツギでジェットストリームアタック。かわいい。

あと柳は土門、獅子丸は鬼道だと思います。
狐と鬼百合はまぁ、当てられません。素敵すぎて。


こんな感じでよろしくお願いします。
ヒャッコおもしろいので、ぜひ。
レインボゥスパイダーに100円ライターで火をつけながら、そんでどうすんのと土門は言う。する?しない?しない。影野はぼさっと突っ立ったまま言った。そっか。やっぱ嫌?嫌だよ。影野がにがす視線を土門は追いかけた。ややくせのあるレインボゥスパイダーが、呼吸をとおしてしみ渡る。影野のすぐそばには部屋の扉がある。そのしろいほそい指が、ドアノブにかかっているのを土門は見なかったことにした。
少林寺の髪の毛に触れたてのひらが奇妙にあつい。そろそろ帰ってくれないかなと影野はしずかに言った。うんわかったと土門は腰かけていたベッドから立ち上がる。マットレスがあまくきしんで、土門はまばたきをした。指をのばして、その前髪をすく。するすると指が流れていった。止まることはない。おれあゆむちゃんにまじで嫌われたと思う。なにしたの。なんか、いろいろ。ふうん。影野は興味がなさそうに視線をうつむけた。先がとがった耳のそこを指でつまんで、じゃあまたねと土門はわらった。ドアノブにおかれたままの影野のしろい手の上から、土門は自分の痩せたそれをおく。
今度こそひとりぼっちだと土門は帰りながら思った。わらおうとして、だけどわらえなかった。レインボゥスパイダーがまとわりついて、土門の気持ちはぶらんこのようにふれた。君といたい。君とはいられない。君といたい。君といてはならない。がさりと香の灰は燃え落ち、それすらも土門を突き放した。あゆむちゃんに会いたいと思った。嫌われてもなお、会いたかった。あの背中をもう一度抱けたなら。落ちた影はくろぐろと伸びた。あさくすくわれた夜だった。彼はそれをさせてくれないけれど、孤独を分けあうというならば、きっと自分は誰よりも上手にしてみせるのに。






ぶらんこに乗る火薬の庭で
土門と影野。
ちょっと色っぽい感じで。
部活中のささいなミスに課される罰則はいくつかある。プレイ中のときはだいたいがグラウンドをぐるりと五周走らされる罰走だが、それ以外のこと、たとえばむだ口だったりもめ事だったり、そういうときは部室のまわりの清掃をさせられる。日当たりがわるく、手入れなどほとんどされていない部室のまわりはじめついてきたない。空き缶やパンの包みなんかが無造作に捨てられていることが日常茶飯事である部室のうらに、今日は目金と少林寺がいた。
少林寺がまげた腰をぐうっと伸ばして、先輩そっちどうですか、と問いかけると、まあまあですねと目金が肩ごしに振り返る。ジャージのそでが泥でくろく汚れていて、陽はしずみかけていた。つい一時間ほど前のことだった。そういえば、と少林寺が目金に話しかけたとたん、監督の怒声が飛んできたのだ。今日だけで十周はしらされた半田が疲れきった顔ですこしわらう。ふたりは盛大に怒鳴られて、練習が終わってからも着替えることさえできない。まったく君が話しかけるから。目金が雑草のつまったごみ袋の口をしばりながら言う。だからごめんなさいって。少林寺もおなじく、雑草以外のごみが入ったふたつの袋の口をしばる。まぁいいんですよ。目金がしろい手の甲であごのしたをぬぐった。半田くんよりましでしょう。ひひっと少林寺はわらい、ほじくりかえされた地面を靴底ですこしならした。まるでキャタピラでかえしたかのように、ふたりは雑草もごみもすべてなくした。ほとんど腹いせだった。
目金はひとつ、少林寺はふたつ、ごみ袋を下げてテニスコートのわきをあるく。なんの話だったんですか。つまんない話です。言ってくださいよ。チョコのことです。少林寺がそう言うと、目金は口をつぐんだ。あの中身はやっぱりチョコでした。トリュフっぽいし、手づくりですね。メッセージカードが入ってたんですけど。焼却炉にごみ袋を投げ入れ、不燃物は観音開きの倉庫に無理やりつめこんで少林寺は続ける。破って捨てました。中は見てません。あと、チョコも食べてません。目金のしろい手からごみ袋を受け取って、少林寺はそれを焼却炉に入れてやる。そうですか。両手をぱんぱんとはらって目金は言った。つらいことをさせてしまいましたか。
メガネのふちがかすかにひかっていた。先輩あのときないてましたか。そこから目をそらすように少林寺は問いかける。目金はそれには答えなかった。きびすを返したうなじがしろい。少林寺くんはすきなひとはいるんですか。目金のしろい指さきが泥によごれてかわいていた。爪のあいだに入りこんだ泥を、神経質な目金はきっと許せない。います。その言葉に目金はすこしわらった。じゃあつらかったでしょう。先輩はすきなひといるんですかと、少林寺は聞きたくて聞けなかった。しろい横顔がさびしくわらっていた。少林寺はてのひらをひろげてじっと見おろす。目金とおなじように、そこはよごれていて、かわきかけたそれを一刻もはやく、落としてしまいたかった。立ち寄った水道の水はきれるほどつめたかったけれど、目金はいつまでも手をあらっていた。あきれるほどいつまでもあらっていた。つらいことをさせてしまいましたねと目金が繰り返したが、あの日の部室でのことならもう忘れてしまったことだと、少林寺はその言葉に首をふる。目金がぬぐってしまいたいものを、少林寺は見てみぬふりがしたかったのだ。夕暮れの川岸には鴫がこうこうと鳴いていた。少林寺の手をとった、目金の手があきれるほどつめたい。
(部室にはあのひとがいる)






鴫の野にて
目金と少林寺。ふたりなのにひとりぼっち。
[63]  [64]  [65]  [66]  [67]  [68]  [69]  [70]  [71]  [72]  [73
カレンダー
09 2024/10 11
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
プロフィール
HN:
まづ
性別:
非公開
自己紹介:
無印雷門4番と一年生がすき。マイナー愛。

adolf_hitlar!hotmail.com

フリーエリア
アクセス解析

忍者ブログ [PR]