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女性向け11文章ブログ。無印初期メン多め。 はじめての方は「はじめまして」に目を通してください。
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リクエストありがとうございました!
募集はここで締め切らせていただきます。
今回も大変楽しく書かせていただきましたよーうへへ。皆さんが持ってたり見てたりする世界観を、少しだけ覗かせていただけたような気がします。うれしい。


拍手やコメントありがとうございます!いやーもったいないもったいない!ありがとやんす!
Hさんもありがとうございます!またぜひ新しい切り口お待ちしています!もはや勇者イレブンでもドラクエイレブンでもいい勢いですね個人的には!染岡さんはそりゃあふんどしが似合いますよ!イッツジャパニーズクラシカルパンツ!アイムニポーンダンジ!


さて、今回リクエストも終わったので、アニメ感想も更新も少しの間お休みします。
ちょっと新しいものを自分の中にいろいろ入れたいなぁと思ってます。あとは設定とか世界観をしっかり練りたい。クラスの名もない一般生徒とか先生たちとか書きたいんですよねー。
そんな感じで、書きたくなったときに、また書き始めようかな、と。たぶんすぐ戻ってくると思います笑
というわけで、少しお休み。
では!
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夏未が買い食いをしたことがないなどと冗談みたいなことを言うので、ふたりで先に学校を出た木野を探している。三人でドーナツでもたべようと思ってあるき出した矢先、夏未が車を出そうかと提案してくれたが、音無はそれを断った。ああいう高級なかしこまった車は苦手なのだ。なんだか手足がかゆくなる。庶民派の音無は、いいもの、というのが苦手で、いいものの上で澄ましかえった夏未も最初は苦手だったが、最近はおもしろいひとだと思うようになって、自分から話しかけたり遊びに誘ったりするようになった。夏未もまんざらではないらしく、木野がいれば、という条件つきなら、だいたいのことにつきあってくれる。夏未は木野のことがとてもすきだ。木野さんと音無さんとカイグイするなんておもしろいわ、と楽しそうにあるいていた夏未が不意に足を止めたのは、汚いどぶ川にかかる橋の側だった。木野が三人の少女に囲まれていて、少女たちはひどく怒っている。うちひとりは木野に詰め寄り、があがあと怒鳴っていた。音無はあわてて夏未を路地の陰に引っぱる。
木野はなにも言わずに彼女の言葉を聞いていた。彼女はひどく激昂した様子でわめき、かと思うと泣き出して、泣き出しついでに木野の髪の毛をわしづかみにして引っぱった。ピンが地面に転がる。わきにいた別の少女が木野のブラウスの二の腕を引き、その反対側にいた少女が木野から鞄をむしり取った。木野は抵抗もせずなされるがままにされ、死ねくそ女、という怒号とともに鞄が川に投げこまれるのを、奇妙にやすらかな穏やかな顔で見ていた。最後に彼女は音たかく木野の顔を打ち(、それは、殴る、といったほうが近かったかもしれない。ひどい勢いの一撃だった)、まるで自分が被害者であるかのように左右の友人にすがりついて、そのまま去っていった。友人たちは冷ややかな目で木野をにらんで、もう「泥棒」しちゃだめだよ、と言い捨て、振り向きもせずに行ってしまう。夏未がぎゅっとつかんでくる腕がいたかった。その横顔が怒りに蒼白になっている。
木野は膝を折ってピンを拾い、平気な顔をして前髪につけた。引かれてよじれたブラウスのぼたんやりぼんをきちんと直し、スカートを払って、川へ降りる階段を封じた錆びた金網を乗りこえる。そのまま木野の背中が階段の下へ消えるのを見送って、音無は夏未の横顔をちらりと見た。なんなの。夏未はかすれた声でつぶやき、しかし音無には心当たりがあったので、なにも答えられなかった。木野の素行のことだとわかった。泣いていたあのひと。確か、テニス部のキャプテンとつきあっていた。テニス部のキャプテンは、木野のことがとてもすきだった。きっと、そういうことがあったんだろう。そしてあのひとは、ううん、テニス部のキャプテンも、捨てられた?そこまで考えたときに腕を引かれ、音無の思考は中断する。夏未は音無を引っぱって大股であるき、金網を勇ましく乗りこえてごみだらけの川辺へ降りた。ヘドロと汚水でできているような汚い川。木野はそこへからだを沈め、投げられた鞄を探していた。
よしなさい。夏未はつよい語調で言い、木野をにらみつけた。あなたがそんなことする必要なんてないわ。声のつよさとは裏腹に、その目があかくうるみはじめている。上がりなさい。早く。木野は立ち上がり、泥が二の腕までこびりついたおそろしく汚い手で、臆することなく落ちかかった前髪をかき分けた。額から泥水がひとすじ、木野のしろい顔を縦に裂くように流れ落ちる。異臭はふたりの元にまで届いた。もうやめて。お願い。木野はからだのほとんどを汚水に沈めて、それでもなお探し物をやめない。ごみの引っかかった鞄、中身がほとんどなくなったペンケース、かわいいポーチや手帳もみな、無惨な姿で拾い上げられた。水を吸ってがぶがぶになった教科書とノートを引き上げ、中をめくって木野はちょっとため息をつく。文字、流れちゃった。そう言ってほほえむ木野の横顔は、ぞっとするほどにうつくしかった。夏未は呆然と立ち尽くしている。今にも泣き出しそうな顔をして、拳をふるわせながら。
やがて木野は水から上がってきて、言葉を飲みこむふたりを見て、なぜかはにかむようにほほえんだ。ごめんなさい。そうしてそんなことを言う。あの子たちはわるくないの。夏未は思ってもみないことを言われたように、おおきな目を見開いた。どうして。木野の華奢な足は泥だらけで、スカートもブラウスも、おそらく二度と着られないくらいに汚れていた。異臭の汚水にまみれ泥に汚れ、それでも、木野はほほえんでいる。夕陽にななめに照らされて、木野は、聖女のようにきよらにうつくしかった。音無は夏未を押しのけるようにして一歩前に出ると、ぐしゃぐしゃの木野の首に腕を回して、そのからだを抱きしめた。春奈ちゃん?木野が驚いたように言う。汚いよ。音無は首を振った。鼻の奥がつうんと痛む。音無のからだを突き動かしたものは、瞬間的にあたまを突き抜けた衝動だった。なぜだかわからないけど、こうしなければならないような気がした。こうしなければ、夏未は。そして、木野は。
(これはなに?)
(わたし、どうしてこんなにかなしいの)
その夜、生まれてはじめて流れ星を見た。思っていたほどすばらしくもうつくしくもなかった。それなのに涙が止まらなかった。あのとき泣かなかったのは、あのひとだけだった。誰の願いが叶っても、あのひとの願いだけは叶わない。誰もがとっくに気づいてしまっていた。それなのにあのひとはわらっている。きっと今も。









仇花は夕焼
マネージャー三人。
リクエストありがとうございました!女子のリクエストいただくとテンション上がります。お察しの通り木野さんがすきです。
さよなら栗松。
希望とともに放たれたものを探している。なんでもないように言う横顔がへんに張りつめていたので影野は言葉を探した。星間飛行の銀河鉄道はアルタイルを折り返したところで、遠くで金星シグナルがちかっちかっと光っている。少林寺はそれを追いかけて地球にやって来たという。もうなん万年も前のはなしだ。彼の故郷はふくろう星雲の右目の奥で、おなじ日に旅立った仲間たちはみな死に絶えたと言った。酸の星、氷の星、不毛の星、熱量を持った恒星、浮遊する無数の隕石、ブラックホール、超新星爆発、それらの不幸な事故によって。あるいは、孤独に耐えかねて。少林寺は地球に降り立ち、はじめの海で原始生物を見守りながらそれを探した。時に焼けつく地を這い、時には底知れぬ海へ身を投じた。ひとつの肉体ひとつのいのちでは到底足りず、細胞を切り離して何回も何回も生まれ直しながら、いまだ見つからぬそれを、たったひとりで探しているという。
(夢だ、と影野は思っていて、それと知りながら)そうっと手を伸ばして隣にいる少林寺のしろいほほに指先を触れさせた。その感触があたたかくて柔らかくて心の奥の方にほとほとと沈んでいくようなものだったので(、その代わりにこれが夢であることに影野はひどく落ち込む。)、吐いた息があまりに幸福だったことに、少林寺にいぶかしげに見つめられるまで影野は気づかなかった。ゆっくりとほほえむと少林寺もにこりとわらう。なんていとおしいのだろう(これが夢でさえなければ)。銀河鉄道は静寂。本数の少ない閑線はアルタイルのそばでおおきな荷物を担いだ狩人をひとり拾い、そこから先に新たな乗客はなかった。そっと触れた少林寺の髪の毛はしっとりと柔らかく、(夢なのに手触りも音も匂いも目が覚めるほど鮮やかで影野はどんどん絶望していく。これが現実であったならなにもいらないくらいの至福であるのに!)少林寺は(気づいているのだろうかと、思う)窓の外を見る(なんていとおしいのだろう、と思った)。
やがて鳴り響いたフィドルのような汽笛に少林寺は顔をあげ、ぱっと立ち上がると車両の窓を開けた。線路の下はぼかぼかした虹色の渦。遠くでは閃光。白鳥線は星々の活動が特に活発なところだ。生まれては死んでゆく星たちの永遠の興亡。少林寺がからだを乗り出すので、影野はあわててその華奢なからだが窓からすべり落ちないように押さえる。少林寺は上半身のほとんどを宇宙空間に晒して、じっと一点を見つめていた。ときどき飛来する隕石がびょおっと尾を引いて掠めていく。少林寺の髪の毛がそれ自体彗星のようにたなびいた。安全運転のため、銀河鉄道はここで急速にカーヴ・降下する。あっ。短く囁き、少林寺は手を伸ばした。どぅん、と空間のみを震動させた隕石同士の衝突の向こうに、うつろな黒点をまなこのごとく並べたふくろう星雲がぼうっと霞む。わずか一瞬。鉄道は逆しまに落ちていく。白鳥線は数百年に一度の運行だ。こうして、恐らくは二度と帰れない故郷に会いに来る少林寺の痛々しくもけなげな姿。影野の胸はいとおしさにつぶれそうになる。
なにを探してるの。影野の言葉に、少林寺はゆっくりと手を下ろす。おれたちは決まったからだを持たないから。影野から見えるのは真横にたなびく少林寺の髪の毛だけだった。ごうっと音を立て、銀河鉄道は天の川へ飛び込んだ。探すために、みんな、いろんなものを棄てた。おれは。視界の端で赤色巨星が膨張から収縮を繰り返す。言葉を覚えて、忘れてしまいました。おれたちが探していたものを、もうおれは覚えていません。それなのに。と、ちいさな背中はこわばった。なにかをじっとこらえるように。飲み込んだ言葉が孕む絶望を確かに感じて、影野はくちびるを開いた。夢だろうか。これは夢だろうか。夢であってほしい。ああでも、そうしたら。その瞬間、少林寺の背中から現れた、眩しいほど光を放つちいさな鳥が、矢のように翼を翻して影野の口の中へ一直線に飛び込んだ。喉が太陽のように燃え盛る。あ。
目を開いたときに残っていたのは高揚だった。得体の知れない。ああ。影野はそっと腹を抑えた。ここにあるのがそれだ。希望とともに放たれた宇宙の芯。少林寺が影野を見ている。帰りたい。(帰りたい?)覚えてる。影野の言葉に少林寺はまばたきをした。ここだよ。影野は手を伸ばし、少林寺のちいさなてのひらを取った。少林寺が不意に寄りかかるように影野のからだに腕を回す。腹に耳を押し当てて、じっと、それを探している。いつか必要になったときには。影野はそのちいさな背中をてのひらでくくむようにしながら、静かに、囁くように言った。腹を割いて、出してあげる。少林寺は答えなかった。長いような短いような沈黙のあとに、ぽつりと、川の音がする、と言ったきり。もうこの子にはなにもかも擲っていい、と思った。腹を割いて取り出した希望が嘘でも(、あそこに少林寺が帰ってしまっても)、影野の中には永遠に残る。いとおしい少林寺。あの星にきみを、おれは、帰したくない。
影野は少林寺を抱きしめる。あの川でそうしたように。流すだけではない。逆らうだけではない。隔てるだけではない。そういうこともある。いとおしいきみを誰にも見つけられないように、浮かばないように、沈めるときもある。そこは深淵の宇宙。ありとあらゆる愛。その川の一番深い場所は。一番深い場所には。









その川の一番深い場所。
影野と少林寺。
リクエストありがとうございました!少林寺がかわいくていとおしくてなんでもしてあげたくてそれが歓びな影野、がすきです。モチーフはあのマンガとあの童話。
立っているときに自分の足の裏が見えないからって泣くひとはいない、というようなことを遠回しで大げさに書かれた部分にうすいピンクのペンでラインが引いてあって、その脇にこれはかすれかけたボールペンで、ツウビイオアノットツウビイ、と書いてあった。さあるべきかあらざるべきか/生きるべきか死ぬべきか。シェークスピアを引用するほどの文句とも思えなかったが、さあるべき、だったのだろう。セリフの主は不幸な女で、不幸なわりに前向きにつよく生きようとしている。らしい。それきり興味をなくして土門はそのホチキス留めの古いシナリオを戻した。それは古書店の奥、ひと山いくらのようなぼろぼろの書籍のすき間になぜか紛れ込んでいた。おそらくは芝居のシナリオで、奥付け部分には昭和五十八年と書いてあった。ほこりとかびの匂いがする。
影野は背表紙が色あせた赤本が並んだ一角をじっと眺めていた。買うの。土門が声をかけると影野は首を振って、上智の05年がない、と指をさした。誰か受けたのかな。五年も前の?おんなじような問題ばっかり出るんじゃない。わからないけど、と影野は阪大09を08の隣に無理やり押し込む。酔狂なことに、大学別年代順に並べ替えをしていたらしい。よくわかんねえやつ、と思ってその通りのことを口に出すと、わからなくていいんじゃない、と影野は平然と答えた。さあるべき、か。土門はちょっと首をかしげ、つまらなそうな顔をする。休日にたまたま会うにしては、影野は面白味のある相手ではなかったな、と思う。じゃあ、と軽く手を振って別れ、入口で振り向くと影野はまだ赤本の棚の前でうろうろしていた。ほこり臭さが妙に鼻につく。
それが夏の終わりのことだ。
つまりはわからないことをわからないままにしておくことも必要だということで、影野を含めた数人がが訳あってチームを離れ、また戻ってきたときに土門が思ったのはそんな感じのことだった。わかろうとすれば不幸になるし、それを求めて足掻くようなことは誰にとってもよいことではない。わかろうとして呑みこまれたような例もあったし、それは少なくとも土門にとっては必要なことではなかった。立っている足の裏が見られないと泣くほど愚かではない。さあるべきだったのだ、彼らは、要するに。風はつめたく、脳は燃え盛っていた。それでいいなら、構わないと思った。思おうとした。夏は終わったのに土門の内側をひたすらに燃やすものがわからない。望んで傷つき打ちのめされた、奇妙にうつろな目をした彼らの削がれた牙の痕を見て、催す憐憫がそれだったのだろうか。だったら。
土門にはわからないんじゃないかな。影野はいやにきっぱりと言った。華奢でほそながい手を土門に握らせたまま。髪の毛の奥から土門をじっとにらみながら。土門には、きっとわからないと思うよ。じんちゃんにはわかるの。わからないよ。でも、おれはわかりたいと思わない。へぇ。諦めてるんだ。違うよ。わざと声をあかるくした土門を、影野は軽蔑するような声音でぞっと撫でた。わからないことは、わかる必要なんてない。わからなくても、おれはもう知ってる。土門は目を見開く。風はつめたく、脳は燃える。影野の手が土門のてのひらの中でもがいた。それでいいんだ。
その言葉のあとには世界から音が消え、次に土門を打ったのは滝のような絶望だった。さあるべきかあらざるべきか。生きるべきか、死ぬべきか。指先がこわばって震える。影野の手は濡れそぼっていた。影野はじっと土門を見ている。土門が打たれているすき間なく降り注ぐおもたくつめたいかなしみが、土門を通じて影野にしぶいている。まるで夕立のようだった。あのシナリオの表紙には、汚い手書きで夕立の類とあった。ふたりの間は永遠ほどに分かたれたのに、まだ繋がっているてのひらがいとおしかった。さあるべきだったに違いない。そう思いたかった。
「ひとりで、いいんだ」
罪ならば償う。けれど、分け合う孤独のむなしさを、きみは知っているのだろうか。








夕立の類
土門と影野。
リクエストありがとうございました!お時間いただきましてすみません。土門と影野いいですよね!
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無印雷門4番と一年生がすき。マイナー愛。

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