ヒヨル 忍者ブログ
女性向け11文章ブログ。無印初期メン多め。 はじめての方は「はじめまして」に目を通してください。
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すっかり忘れておりましたが、本日当ブログ二周年を迎えることができました。
皆さまのおかげでございます。本当にありがとうございます。
二年前からほとんど変わっていないなんて寒気がいたしますね。
今日もごはんがすすむくんです。


というわけで恒例のリクエストをまたやらせていただきます。
皆さんの思うあんなイレブンこんなイレブン、遠慮なくお申し付けください。全力投球いたします。
普段書かないキャラや取り扱ってないキャラ、こんなカプで、等のリクエストも大歓迎でございます。
期間は適当に。ぬるくのんびりやらせていただきます。
特になにもなければおいしいケーキ屋さんの紹介をします。


フロスピにつきましてはまた改めて告知させていただきます。
それではコンゴトモヨロシク。
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フロスピに参加できる模様ですので遅まきながら告知。
2月11日はサークル名『浮舟寿司』でかつおかつお!のびーこさんとまったりもっさり参加予定。八割方無料配布(文章とぬり絵)なのでお気軽に遊びにいらしてください。
委託も承ってるかもしれません。
詳細はいろいろ確認いたしましてから改めて。とりあえずご一報ということで。



今回のイベントに際しまして、以前無料配布した一年生未来本「勝手にしやがれ」を少し刷り足して持っていこうかなと思っています。
どのくらい刷るかの参考にさせていただきたいので、気になるなという方は拍手とかでコッソリ教えてください。

今のところ手元にある影野本も、残部あまりありませんが持っていく予定です。
その辺も追い追い告知させていただきます。


以上。よろしくお願いいたします。
壁山が珍しく歯切れの悪い物言いをしているのを、影野はベッドに横になったままぼんやりと聞いていた。壁山は病人の陰気がべたりと層になったしろい部屋には居心地のわるい様子も見せずに、言葉少なに横たわる宍戸の手を恐らく無意識に握ってやっている。今度は沖縄に渡っていたとかで、黒糖や紅芋のちんすこうだのシークヮーサー味のハイチュウだのを手土産に下げてきて、それらはありがたく松野が食い散らかした。キャプテンはもうここには来ないって。ひとしきり互いを労ったあと、壁山は厚いくちびるを曲げてそう言い、本当にすまなそうに巨体を縮めてうなだれた。それを聞いた風丸が覗く片目を大きく見開く。なにかろくでもないことを言い出しそうな風丸を先制で半田がはたいて止め、なんでだ、と染岡が低い声で訊ねる。ゲエッと松野がわざとらしくげっぷをし、壁山はますます途方に暮れたような顔をした。各々が焦り、いら立ち、絶望し、それらがゆくあてもなく尽きていった病室で。
円堂が前に来たのは風丸が来る前、栗松が急患のように運び込まれてきた少しあとだった。円堂は相変わらずの不景気な顔をして相変わらずの不景気な面々を見渡し、座り心地のわるい堅い丸椅子に腰かけていた。入り口の近くで、ひとり。見舞われたはずの彼らはそんな円堂の様子に気を揉み、恐らくはこうなることをわかっていたのだろう壁山(他のメンバーと一緒にわざわざ時間をずらして見舞いに来ていた)が置いていった菓子を勧めた。円堂は勧められるまま黙々とそれを食った。松野がいやな顔をする。いいだけ食った円堂は眉を寄せて病室をぐるりと見渡し、ため息をつく。ごちそうさん。なんだよ。半田が声をあげる。もう帰るのか。円堂は立ち上がりながら、驚くほど去りがたそうな顔をした。明日出る。そうか。拍子抜けしたような半田に円堂は視線を向け、ここはいいな、とぎこちなくほほえんだ。おまえらといると落ち着くよ。あとこれ目金から栗松に、と半田はでかい箱を受け取っていた。コズミックプリティレイナ、のロゴがビニルから透けて見えた。
寝てばかりだと背中が痛いのだと影野はそこではじめて知った。壁山はいいやつだな。彼が行ってしまったあと、妙に打ち沈んだ病室で影野は別のことを考える。あんなこと、言いたくて言いにきたわけじゃないだろうに。円堂もだからわざわざ壁山に託したのだろうと思った。壁山ならそれを誰より上手に伝えてくれるだろうと。効果はてきめんだった、と言わざるを得ない。あまりに上手に伝わりすぎた。円堂はここには二度と来ない。そしてその考えは決して翻らない。全員にそれがわかってしまうくらいに。それをわかって、受け入れて、受け入れられるはずもないのに、そうしなくてはいけないのだと突きつけるみたいに。誰もなにも言わなかった。風丸は呆然と立ち尽くし、松野は握った拳を震わせ、半田は顔を伏せた。少林寺は身動きもせず、宍戸は死んだように息をひそめ、栗松は視線を扉へと投げかけた。染岡が出ていったままそこは開かない。
影野の枕元には目金が栗松によこしたレイナのフィギュアが飾られている。けばけばしいピンク色の服を着て、光線銃を構え、レイナは虚空に向けてにこやかにほほえむ。栗松はそれを照れくさそうに影野の枕元に置き、レイナは宇宙を救うんでやんすよ、と言った。妙にまじめな声で。風丸はここに来て数日は口もきかなかった。戦いの中で病んだ彼らにくらべれば、と、影野はどうしても言えない。染岡は泣いているだろうか。悔しかったろうか。彼らがどんなに悲しくても、自分たちはそこに手を伸ばすこともできない。円堂が自分たちを救わなかったように。影野は静かに目を閉じる。円堂は最初から言っていた。捨てていっても恨むなと。だから影野は恨まない。円堂は決して嘘はつかない。円堂は気づいてしまったのだ。きっと。もう戻ることはできないのだと。せめてそれを信じていたかった。なにが彼らを傷つけたとしても。おまえらといると落ち着くと言った円堂の痛いような顔を、信じていたかった。
自分たちはなにも知らない。そのことが円堂には大切だったのだ。焦りもいら立ちも絶望も尽きたこの乾いた部屋で、叶わぬ願いに盲目とあがき、声も掠れた自分たちを見て、それでも円堂はわらったではないか。戦いに病んだ円堂に、他になにを望むという。円堂だって救ってほしかったに違いない。円堂にこそレイナが必要だった。宇宙を救う無償の愛が。「殺そう」風丸がぽつりと言った。「だったら円堂を殺そう」それもわるくはないと思ったが、その前に染岡の手を握り返してやるべきかと思った。円堂ならそれを聞いても、いつもの不景気な顔で、いつかおまえらのために死んでやろうと思っていた、と言うだろう。平気な声で。影野はそのときも染岡の手を握っているだろう。気づかずにいることもできるだろうが、もしもそれに直面してしまったとき、やさしい彼はきっと泣いてしまうだろうから。










いつか死んでやろうと思っていた
影野と染岡と彼ら。
あけましておめでとうございます。
昨年は大変お世話になりました。
いろんな方と出会えて、おはなしできて、とても充実した一年でした。
本年もぼちぼち書いていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。




2011年1月1日
ヒヨル/まづ
家にはトースターがないので魚を焼くグリルでパンを焼くのだと言ったら、栗松は愛嬌のあるまるい目をさらにまるくして、変わってるね、と言った。まじで?とか、すごいな、とか、そういう当たり障りのない言葉を簡単に口にはしないのが栗松のいいところだと宍戸は思っていて、ちゃんと考えた上で返事をしてくれたのだ、ということがよくわかるような独特の言葉を選ぶのが、少しおもしろいとも思う。グリルにはトースターみたいなタイマーがついていないので、キッチンに椅子を引っ張っていって携帯で3分測るということも話すと、栗松はまじめな顔でキッチンタイマー使えば、と言った。宍戸はへなっとわらい、探してみる、と答える。栗松の言葉はいつも正しい。そのとき栗松は、キッチンでパンが焼けるのを3分も待つ宍戸がなんだかひどくかわいそうに思えて、それでそういう提案をしてみただけのことだった。宍戸は栗松の言葉にいつも想定外に嬉しそうな顔をするので、栗松はときどききまりがわるくなってしまう。
栗松はそりゃちびで出っ歯でへんな髪型で頭でっかちな、おまけに鼻炎持ちだけど。宍戸は思う(。ついでに、髪型だけはひとのことを言えた義理ではないな、とも)。たぶん自分よりもいろいろものを知っていて、自分よりもちゃんと考えている人間なんだろうな、と感じていた。ふたり並んで帰りながら。栗松が考えていることの、たぶん80パーセントくらいはどうあがいても表には出てこられない。どんな過激な言葉が栗松の中に渦巻いているとしても、彼の口から出るのはいつでも、どことなく臆病な感情と、それから、ちゃんと考えられた言葉だ。その20パーセントを少しでも自分に分けてくれているなら嬉しい。単純にそう思う。栗松と並ぶと頭がちょうど肩くらいに来る。守ってあげなきゃなぁと思いたくなる身長差だ、と宍戸は考える。実際に、栗松に守られているのが、いつでも宍戸の方であったとしても。それでも宍戸は栗松と並ぶたびに、守ってあげなきゃなぁ、と思う。
不当な扱いに傷つくのは、いつも決まって栗松の方だった。行こう。栗松はそう言って宍戸の手を無造作に取る。努力だけではどうにもならないのだと、宍戸は黙って耐えているように見えた。不当な扱いに、ただ黙って。栗松が平気な顔で守り続ける場所から追い落とされたことは、悲しくもあったが安らかなことだ、と、宍戸自身は思っている。選ばれないことは、選ばれることよりも安らかだ。栗松はだけど決まって、宍戸がメンバーから外されたときには、その手を引いて宍戸を連れ出した。河川敷でも倉庫でも、栗松に手を引かれて行く場所はいつでも嬉しかった。栗松が悲しい顔をしていることだけが引っかかる。そんなに悲しい顔をするようなことでもない、と思わなくもない。選ばれないことは安らかだ。事実、選ばれた栗松は苦しい顔で旅立っていったではないか。誰に手を引かれるわけでもなく。
一度、栗松が鞄に持っていたジュースをくれたことがあった。紙でできたうすむらさきのパッケージの、ブルーベリー黒酢ドリンク、という、ひたすら酸っぱくてのどに染みる飲み物だった。栗松はいつも通りの無表情で、宍戸にそれを差し出した。不当な扱い、のあとに。宍戸は黙ってそれを受け取り黙って飲んだ。栗松も黙っていた。飲まないの、と聞くと、いっこしか持ってない、と答えた。自分のためのものをくれたのだと、宍戸はおかしなことにそこで初めて気づき、おかしなくらいに感動した。もしも栗松が女の子だったら。宍戸は思う。ちびで出っ歯でへんな髪型で頭でっかちで鼻炎持ちでも、自分は絶対に彼女を離さない、と考える。その考えは宍戸を奇妙に強く明るくした。そしてそれは、たとえ栗松が男のままでも、実行するのはさして難しいことではなかった。栗松を離さずにいることが、彼への答えであるように思っていた。ずっとふたりでいるんだろう。それはとても自然な考えだった。
それでも栗松は行ってしまった。宍戸を置いて。
守られているのは幸福だった。そこに根差す哀れみに、ずっと前から気づいていたとしても。栗松はいつでも宍戸を連れ出してくれた。20パーセントの言葉を惜しみなく尽くしてくれた。でも、栗松は行ってしまった。宍戸の手の届かない場所に。臆病者のくせに。明日はうちに泊まりに来れば。つっけんどんな栗松の言葉に、宍戸は一瞬立ち止まった。その分栗松は先に進んでいる。うちにはトースターがあるよ。そう言う栗松の健やかな後ろ頭。心臓がひとつ震えた、その瞬間に宍戸は自分の痩せた指を栗松の無防備なてのひらにすべりこませていた。栗松が肩ごしに振り向く。予定調和みたいな自然さで。今うしなえば、なにも残らないとふたりとも知っていた。なにも残らない代わりに、傷つくこともせずにすむと。宍戸は栗松の手を強く握る。今うしなうくらいなら死んでしまった方がましだと思った。難しいことではなかった。守ってあげなきゃいけないと思った。それだけのことだった。
手を引いてくれるひとが、栗松にも必要なのだ。誰が届けてくれなくても、あさっての枕元にはちゃんとおれがいてあげよう。









黄昏の山路
宍戸と栗松。
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